【質問者】
柿崎秀宏 旭川医科大学腎泌尿器外科教授
【経腟・経腹式,自己組織・メッシュ使用による修復がある】
骨盤臓器脱は閉経後高齢女性に多くみられ,加齢,閉経のほかに経腟分娩(多産,難産),肥満などがリスク因子です。骨盤臓器脱のタイプには膀胱瘤,子宮脱,直腸瘤があり,子宮摘除後症例では腟断端脱がみられます。修復手術には,アプローチによる経腟・経腹式と,筋膜などの自己組織を用いた術式(native tissue repair:NTR)とメッシュを使用するものがあります。
従来最も普及している術式は腟式子宮摘除術と腟断端固定術・腟壁形成術の併用ですが,少なからず再発がみられます。これらのNTRに加えて,2000年に経腟式メッシュ(tension-free vaginal mesh:TVM)手術が誕生し,低い再発率と低侵襲性からわが国でも普及し,2010年に膀胱脱手術(メッシュを使用するもの)として保険収載されました。しかし,創部メッシュ露出や慢性疼痛などの合併症に対して米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は警告を発表し,2019年にはTVM手術用メッシュの米国内での販売を停止しました。幸いわが国では,米国と比較して手術関連合併症の発生率は低いです。現在も国内メーカーのメッシュ供給が継続され,同手術は施行可能ですが,厳格な適応判定と合併症の回避が求められています。
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