サイログロブリン(Tg)は甲状腺濾胞細胞内で合成される分子量約67万の糖蛋白である。血清Tg値は甲状腺癌だけでなく,良性腫瘍,バセドウ病,橋本病,亜急性甲状腺炎などにおいて高値をとることが多く,甲状腺結節の良性・悪性は判断できない。しかし,甲状腺癌に対する全摘後あるいは準全摘+放射性同位元素(radio isotope:RI)によるアブレーション後では,通常,血清Tg値は検出限界以下となるため,このような場合に血中にTgが検出され,継時的に上昇するなら癌の再発・転移が疑われることになり,腫瘍マーカーとして有用となる。
また最近,甲状腺癌全摘後に血中にTgが検出された症例では,Tg値の倍加時間が強い予後因子となるとの報告もある1)。なお,血中の抗Tg抗体(Tg Ab)が陽性の場合はTgの測定系がその影響を受け低値となってしまうため,正しい値とならない2)。したがって,TgAb陽性例では甲状腺癌のマーカーとしてTgを使用できないが,TgAb陽性例ではTgAbそのものが腫瘍マーカーとして使用できる。
血中の微量Tgは,1960年代に抗原抗体反応のRIを標識として定量的に測定する放射免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)が開発されたことで,測定が可能になった。
現在では,RIを使用しないNon-RIAが主体となって,Tg測定には,酵素を標識物質とする免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)のサンドイッチ法が汎用されている。これは,酵素反応に基づく発色・発光をシグナルに用いることで抗原抗体反応を測定している。
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