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抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(SIADH)[私の治療]

No.5093 (2021年12月04日発行) P.43

西山 充 (高知大学保健管理センター教授)

登録日: 2021-12-05

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  • 抗利尿ホルモン不適切分泌症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)は,低浸透圧血症の状態にもかかわらず,抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が持続するために,水貯留と低ナトリウム血症をきたす病態である。中枢神経疾患,肺疾患,バソプレシン(AVP)産生腫瘍,薬剤性など,多彩な原因により生じる。なお,ADHとAVPは同一ホルモンである。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    SIADHのうち急激に低ナトリウム血症が惹起される急性発症例では,中枢神経において細胞内外の浸透圧較差による細胞浮腫をきたし,脳浮腫に伴う意識障害がみられる。慢性発症例は,血清ナトリウム(Na)値や血漿浸透圧の低下が緩徐に生じるため,低ナトリウム血症の程度に比して症状は軽微(全身倦怠感,食欲低下)のことが多い。しかしながら,慢性の低ナトリウム血症が長期間持続すると,骨粗鬆症や認知機能障害をきたすことが知られている。Na欠乏症とは異なり,本症では理学的に脱水症候はみられない。

    【検査所見】

    腎・副腎機能が正常であり,脱水を示す検査所見がみられず,低ナトリウム血症(<135mEq/L),低浸透圧血症(<280mOsm/kg),高張尿(>300mOsm/kg),Na利尿(>20mEq/L)を満たし,血漿ADH濃度が測定可能であれば,ADH不適切分泌の状態であると判定される。

    また一方で,加齢や薬物によりADH非依存性に水利尿障害をきたす病態も知られている。このため,ADH依存性/非依存性にかかわらず,尿希釈障害により生じる低ナトリウム血症をsyndrome of inappropriate antidiuresis(SIAD)と包括して扱われることもある。

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