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乳癌・乳房パジェット病[私の治療]

No.5095 (2021年12月18日発行) P.46

野木裕子 (東京慈恵会医科大学乳腺・甲状腺・内分泌外科准教授)

登録日: 2021-12-21

最終更新日: 2021-12-15

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  • 乳癌は乳腺組織における乳管または小葉上皮から起こる悪性腫瘍で,好発年齢は45歳以降,日本女性における罹患率は9人に1人である。乳房パジェット病は乳輪下乳管から皮膚へ進展する悪性腫瘍である。

    ▶診断のポイント

    マンモグラフィにおける石灰化,乳房超音波における腫瘤に対して,画像ガイド下コア針生検または吸引式乳房組織生検を施行し,病理組織学的に診断する。乳管内の広がりや微小な多発,対側乳房病変を検出するために乳房造影MRI検査が有用である。リンパ節転移は穿刺吸引細胞診で診断する。乳房パジェット病は乳輪びらん部分の擦過細胞診,またはパンチ組織生検によって診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    病期,病巣の範囲,遺伝,患者の併存疾患,年齢,価値観を考慮して手術,薬物,放射線による治療を組み立てる。再発時の治療は多彩なので,本稿では周術期の方法を記載する。

    【手術】

    乳房:病巣部切除後の乳房の整容性が保持できる場合は,乳房部分切除を施行する。乳房切除の場合,再建の有無,再建の方法を決める。
    リンパ節:臨床的にリンパ節転移を認めない場合は,センチネルリンパ節生検を施行する。リンパ節転移を認めた場合,乳房切除の場合は腋窩郭清を施行するが,乳房部分切除で術後照射をする場合は,2個までの転移は腋窩郭清を省略する。臨床的に転移を認める場合は腋窩郭清を行う。

    【薬物療法】

    再発を抑制するために施行する。腫瘍径2cm以上または腋窩リンパ節転移陽性のホルモン感受性(HR)陰性またはヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)陽性乳癌には,術前化学療法を(HER2陽性であれば抗HER2療法を併用して)施行する。手術検体における腫瘍細胞遺残の有無によって,術後の補助療法を決定する。
    腫瘍径が小さく,リンパ節腫大を認めない場合は手術を先行し,病理結果によって術後薬物療法を行う。HR陽性HER2陰性乳癌には,5~10年のホルモン療法を施行する。閉経前かつリンパ節転移がある場合は化学療法を上乗せし,閉経後ではリンパ節転移3個までは21遺伝子アッセイ(オンコタイプDX)の危険点数に応じて化学療法を上乗せするかどうか決定する。

    【放射線治療】

    乳房部分切除後の場合,残存乳房へ50Gy施行する。腋窩リンパ節転移が4個以上のとき,領域リンパ節(内胸,鎖骨周囲)へも照射する。乳房切除後の場合,腫瘍径が5cmを超える,または腋窩リンパ節転移が4個以上のとき,胸壁と領域リンパ節への照射を行う。リスクに応じて,腋窩リンパ節転移が1~3個でも領域リンパ節照射を施行する。

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