バセドウ病は自己免疫疾患の一つであり,甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプター抗体(TRAb)によって甲状腺が刺激され,甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで甲状腺中毒症を呈する。人口200~400人中1人に認められるcommon diseaseであり,患者の男女比は約1:3と女性に多い。
臨床所見として,①頻脈,体重減少,手指振戦,発汗増加などの甲状腺中毒症症状を呈する,②びまん性甲状腺腫を呈する,③眼球突出または特有の眼症状を呈する。これらの臨床所見のうち1つを認め,検査所見では血中フリーT4,フリーT3(FT4,FT3)どちらかまたは両方が高値で,TSHが低値で抑制されている(0.1μU/mL以下),そしてTRAbもしくは甲状腺刺激抗体(TSAb)の陽性が認められれば,確からしいバセドウ病と診断される1)。確定診断には放射性ヨウ素(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値,およびシンチグラフィでのびまん性の取り込み亢進を認めることが必要1)だが,核医学検査が施行可能な施設は限られているため,ほとんどの場合,確からしいバセドウ病と診断した段階で治療を開始する。
バセドウ病の治療には薬物療法,外科手術および放射線ヨウ素(131I)内用療法があるが,わが国では初期治療としてほとんどの場合,抗甲状腺薬〔チアマゾール(MMI)またはプロピルチオウラシル(PTU)〕による薬物療法が選択される。薬物療法は原則すべての未治療バセドウ病患者に適応となる。妊娠初期の妊婦を除き,MMIが第一選択薬となるが,確からしいバセドウ病もしくはバセドウ病と診断した場合は,FT4の値によって軽症~中等症(FT4 5ng/dL未満)もしくは重症(FT4 5ng/dL以上)を判別し,軽症~中等症患者にはMMI 15mg/日から投与開始する2)。また重症例にはMMI 15mg/日に加え,無機ヨウ素(ヨウ化カリウム)を併用する2)。抗甲状腺薬と無機ヨウ素は同時に服用して問題ない。安全性と有効性の両面からMMIは初回投与に15mg/日以上は用いない2)。PTUを用いる場合も,やはり初回投与量は軽症~中等症および重症を問わず150mgまでとする2)。なお原則MMIは単回投与とし,PTUは分服とするので注意を要する2)。また動悸や頻脈および手指振戦に対しては,β遮断薬を併用する。抗甲状腺薬による薬物治療を18カ月以上継続しても寛解に至らない場合は,根治療法である外科手術および131I内用療法も考慮する2)。
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