【血栓症リスクのある患者にお勧めできる。ただし,不正出血が出やすく子宮頸癌が見逃される危険性があるため,定期検診を推奨する】
低用量ピルにはエストロゲンが含まれるため,血栓症リスクのある患者への投与が難しく,前兆のある片頭痛,35歳以上で1日15本以上の喫煙,手術前4週間以内などでは“投与禁忌”,また40歳以上,高血圧症の女性では“慎重投与”となっています。そんなときに使えるのが,黄体ホルモン(プロゲスチン)単剤の薬剤です1)。
黄体ホルモンは,体の中でつくられる天然型を「プロゲステロン」,人工的につくられたものを「プロゲスチン」と呼んでいます。ジエノゲスト(ディナゲスト®)は2008年に発売されたプロゲスチン製剤で,卵巣からのエストロゲン産生と子宮内膜が厚くなるのを抑制し,子宮内膜症や月経困難症(月経痛,腰痛,下腹部痛)を改善する効果があります2)(表1)。
①子宮内膜症や子宮腺筋症の疼痛の改善目的
ディナゲスト®1mg 1回1錠 1日2回 内服
②月経困難症の治療目的
ディナゲスト®0.5mg 1回1錠 1日2回 内服
処方前に必須の検査はありませんが,不正出血が出やすく子宮頸癌が見逃される危険性があるため,子宮頸癌検診(2年に1回の対策型検診)を推奨します。初回内服は,妊娠していない可能性が一番高い月経開始2~5日目から開始し,休薬せずに内服を継続します。
また,毎日決まった時間に内服することで,不正出血が起こりにくくなります。他の注意事項として,低用量ピルと異なり避妊効果はないため,コンドームの使用等を推奨します。
なお,865人を対象にした研究では,投与6カ月時点で78.4%に痛みの改善を認めました3)。
ただし,18歳未満の思春期の患者に52週間長期投与した研究では,骨密度の低下(−1.2%)を認めているので,最大骨塩量に達していない年齢の患者に1年以上投与するときには,骨密度に注意して下さい4)。
【文献】
1)柴田綾子:医事新報. 2020;5036:56-7.
2)Andres Mde P, et al:Arch Gynecol Obstet. 2015;292(3):523-9.
3)Techatraisak K, et al:BMC Women's Health. 2019;19(1):68.
4)Ebert AD, et al:J Pediatr Adolesc Gynecol. 2017;30(5):560-7.
【回答者】
柴田綾子 淀川キリスト教病院産婦人科医長