【質問者】
谷口義典 高知大学医学部附属病院 腎臓・膠原病内科学内講師
【皮疹の有無で分類する臨床病型と,病理所見や自己抗体など病態に基づく病型に分けて考える】
薬剤,感染症,内分泌疾患,先天的な遺伝的異常など特定の原因が明らかでなく,自己抗原に対する免疫応答異常に伴う筋炎を特発性炎症性筋疾患(idiopathic inflammatory myopathies:IIMs)とし,その中に多発性筋炎や皮膚筋炎が含まれています。上眼瞼部の浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹),手指の関節伸展部の隆起を伴う紅斑(ゴットロン丘疹)や肘や膝の関節伸展部の紅斑(ゴットロン徴候)をはじめとした特徴的な皮膚炎を伴う場合には皮膚筋炎と,これらの皮疹がない際には多発性筋炎と臨床的にこれまで診断されてきました。
しかし,筋病理による分類では,多発性筋炎と臨床診断された症例の多くは,多発性筋炎とは異なる特徴的な病理像を呈する免疫介在性壊死性筋症であり,多発性筋炎の病理像(非壊死性筋線維を取り囲むCD8陽性T細胞浸潤)を呈する症例はきわめて少ないことが判明しました。
また,抗ARS抗体陽性例は多発性筋炎ないし皮膚筋炎の双方の臨床病型を呈しますが,これらの病理像とは異なる,筋束周囲の筋線維壊死といった特徴的な病理所見を認め,様々な筋外症状を呈することから,抗ARS抗体症候群とも言われ,皮膚筋炎や多発性筋炎と別枠で分類されるようになりました。
このように,皮疹の有無からみた臨床病型と,病理所見や自己抗体など病態に応じた病型に分けて考える必要があります。
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