株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

糖尿病の食事療法[私の治療]

No.5115 (2022年05月07日発行) P.48

山田 悟 (北里大学北里研究所病院副院長/糖尿病センター長)

登録日: 2022-05-09

最終更新日: 2022-05-02

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 糖尿病とはインスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群である。その治療においては,血糖,血圧,脂質代謝の良好な管理と適正体重の維持,禁煙の遵守が求められる。

    ▶診断のポイント

    空腹時血糖値(FPG)126mg/dL以上,75g OGTT2時間値200mg/dL以上,随時血糖値200mg/dL以上,HbA1c 6.5%以上の4項目のいずれかが確認されると糖尿病型とされ,別の日の検査で糖尿病型が再確認できれば糖尿病と診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    糖尿病と糖代謝異常の成因分類には1型糖尿病,2型糖尿病,その他の特定の機序・疾患による糖尿病,妊娠糖尿病の4型があるが,そのいずれに対しても(エネルギー制限を意識しない)ゆるやかな糖質制限食を指導する。基本的にインスリン作用不足から食後高血糖をきたす栄養素は糖質のみだからである。

    わが国ではエネルギー制限食が推奨されたが,目標体重に身体活動係数を乗するエネルギー制限食には科学的根拠が存在しない1)。欧米ではエネルギー制限食で減量しても必ずしもHbA1cは改善しないという報告がある。わが国ではエネルギー制限食で体重がベースラインより増加した報告がある。よって,エネルギー制限食指導で体重や血糖値やHbA1cを改善させられるという期待は持ちがたい。

    米国糖尿病学会では2019年に,糖質制限食を最も血糖管理に根拠のある食事法としているが,ケトン産生食レベルの極端な糖質制限食ではリバウンドが生じやすく,ゆるやかな糖質制限食よりも治療成績が悪いというデータに鑑み,筆者はゆるやかな糖質制限食のみを推奨する。

    なお,摂取エネルギー量については満腹感により決定させる。これが可能なのは,特に蛋白質摂取に伴いグレリンが抑制され,ペプチドYYが分泌されるためである。患者に摂取エネルギー量を計算させなければエネルギー摂取過剰になるという概念は,根拠のない妄想である。

    残り1,178文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top