【質問者】
新井 信 東海大学医学部専門診療学系漢方医学教授
腹診で胸脇苦満がみられるときは,精神的なストレスや不安の存在が推測され,柴胡剤といわれる柴胡含有方剤の治療適応です。気管支喘息のため呼吸器科に通院中の40歳代男性の患者さんは,会社の上司が変わってから呼吸困難が出現しました。検査では気道狭窄は増悪がなく,同科より半夏厚朴湯が処方されました。この内服でも症状の改善がないため,筆者の外来に紹介されました。腹診では明らかな胸脇苦満の所見があり,柴胡剤の適応と考え,柴朴湯に変更したところ症状の改善が得られました。このような症例は腹診所見が,漢方方剤の決定に有用であった症例です。
一方,以下のような症例も経験しています。数年間続く慢性的なめまいの30歳代女性です。耳鼻科より内服薬を処方されていましたが症状に改善がなく,「現代医学的にはもうこれ以上の治療法がない」と言われたことから,「医師から見捨てられたような気がする」と漢方診療を希望してきました。
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