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■NEWS 【米国糖尿病学会(ADA)】大転換に向かう欧米ガイドライン:草案公表

登録日: 2022-06-08

最終更新日: 2022-06-08

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2型糖尿病(DM)例への血糖低下治療は近年、「心血管系(CV)イベント抑制」、「体重減少」など、新たなエビデンスの登場が続く。そのような変化を受け、米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)は、2DM血糖管理に関する合同ガイドラインの改訂に着手している。そしてその草案が、米国ニューオーリンズで開催されたADA学術集会で報告された。現在の欧米ガイドラインから大きく変更される見込みだ。最終版は、9月のEASD学術集会(ストックホルム)で公表予定だという。

新ガイドラインは、2DM例管理の目的を「合併症抑制とQOL最大化」とした上で、患者中心の全人的(holistic)アプローチを採用した。その結果、「血糖管理」と「体重管理」、「CVリスク因子管理」(血糖以外)、「心腎保護」という4つの介入に優先順位はなく、どこから手をつけるかは、患者と医師が話し合いの上、共同で決定する。そして医師は、そのように決定した特定の介入にのみ集中するのではなく、目の前の患者に応じた、それ以外の介入の必要性をも、常に考慮することが求められる。

このような考え方に基づき、血糖低下薬選択のアルゴリズムも大きく変化した。

まず治療は「心腎保護」と「血糖・体重改善」いずれに注目するかで2つの方針に大別される。その上で、「心腎保護」という方針は「CV疾患既往・高リスク」と「心不全合併」、「CKD合併」という亜集団ごとに指針が示される。「血糖・体重改善」方針も、「血糖低下」、「体重減少」別に詳細な推奨が明記されている。そしてある治療方針が達成されたら、次の治療方針に取り掛かる―、今回示されたチャートでは、そのような流れとなっている。

次に、血糖低下薬に関する具体的推奨を概観する。あらゆる患者に第一選択とされる血糖低下薬は姿を消し、上記4つの介入別に推奨薬が示されている。

「血糖低下」における推奨薬は、メトホルミン単剤または、多剤併用である。多剤選択の際には、「体重減少」が同時目標(co-primary goal)である点にも留意する。

「体重減少」を目指した血糖低下薬としては、GLP-1受容体刺激作用のある薬剤が高く推奨され、SGLT2阻害薬も弱いながら減量作用があるとされた。またDPP-4阻害薬は体重に「影響なし」という形で言及されている。

CV疾患既往・リスク因子を持つ2DM例への推奨薬は、SGLT2阻害薬とGLP-1アナログである。またSGLT2阻害薬は、心不全合併例に対する唯一の推奨薬となった。

CKD合併2DM例に対しては、アルブミン尿陽性であればSGLT2阻害薬、陰性であればSGLT2阻害薬かGLP-1アナログが推奨された。

新ガイドラインを執筆しているのは、ADAEASDから選ばれた15名。地域を含む多様性を反映すると同時に、可能な限り利益相反の少ない人選を心がけたという。

なお、草案については現在パブリックコメントを募集中であり、上記からの変更もあり得る。最終版がどのような形で落ち着くのか―、9月を待ちたい。

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