胎児発育不全(fetal growth restriction:FGR)は,妊娠中期・後期を通じて周産期予後不良因子であり,適切な診断と周産期管理が重要である。
FGRを疑う場合,まず分娩予定日の決定方法の確認が重要となる。分娩予定日の決定は,一般的に妊娠初期の胎児頭殿長を用いて行う。
胎児発育の評価には,超音波断層法による胎児推定体重(児頭大横径,腹囲,大腿骨長から算出)が用いられる。「産婦人科診療ガイドライン」では,胎児推定体重が胎児体重基準値の-1.5SD以下である場合,FGRと定義される1)。一方で,American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)では10パーセンタイル未満を基準としている2)。また,International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology(ISUOG)では,FGRとconstitutionalに体が小さいsmall for gestational age(SGA)との鑑別のため,ドプラ法による血流計測と合わせた,以下のようなInternational Delphi consensusを推奨している(先天異常例を除く)3)。
Early FGR(~32週):次の①~③のいずれかを満たすもの。①腹囲または推定体重<3パーセンタイル,②臍帯動脈血流の途絶,③腹囲または推定体重<10パーセンタイルかつ子宮動脈血流または臍帯動脈血流PI値>95パーセンタイル
Late FGR(32週~):①腹囲または推定体重<3パーセンタイル,あるいは②次のa)~c)のうち2項目を満たすもの。a)腹囲または推定体重<10パーセンタイル,b)腹囲または推定体重のパーセンタイル値の低下(2四分位数をまたぐもの),c)cerebroplacental ratio (CPR)<3パーセンタイルまたは臍帯動脈血流PI値>95パーセンタイル
FGRの原因としては以下のものが挙げられる。
①母体因子:内科合併症(高血圧,糖尿病,腎疾患,甲状腺疾患,自己免疫疾患,抗リン脂質抗体症候群),妊娠高血圧症候群,喫煙,やせ,体重増加不良
②胎児因子(染色体異常,TORCH症候群など):妊娠経過中に発熱・発疹などの既往があった場合や,胎児の中枢神経系や肝脾腫・腹水などの異常所見を認めた場合には,トキソプラズマ,風疹,サイトメガロウイルス,パルボウイルスB19などの抗体価検査を行う。また,複数の胎児形態異常を認める場合は,染色体異常が疑われる。
③胎児付属物因子(胎盤・臍帯の異常):胎盤梗塞,周郭胎盤,絨毛血管腫,臍帯付着部異常(臍帯辺縁/卵膜付着)
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