アンドロゲン不応症候群(androgen insensitivity syndrome:AIS)とは,染色体核型は46XYであるがアンドロゲン受容体(androgen receptor:AR)遺伝子の異常により男性化が障害され,女性の表現型を示す疾患である。AR遺伝子はX染色体長腕(Xq11-12)に位置し,遺伝形式は伴性劣性遺伝であり,母親が保因者となる。母親が保因者である場合,患児の同胞女性は50%が無症候性キャリアの可能性がある。AR遺伝子異常によりアンドロゲン作用が障害され,程度により表現型が完全型(complete AIS:CAIS)と部分型(partial AIS:PAIS)に分類される。CAISの頻度は日本人では13万人に1人の頻度である。AISはテストステロンの作用障害の程度により,内・外性器の男性化,脳における男性自認が種々の程度により障害される。抗ミュラー管ホルモンの作用は正常であるため,ミュラー管は退縮し,子宮・卵管・腟上部1/3は形成されない。CAISは外見が完全に女性であり,PAISは男性化が連続的に障害されている。
新生児期の鼠径ヘルニア,思春期における外性器異常や原発性無月経が主な受診理由となる。内分泌検査では,LH/FSH値の上昇,テストステロン値の正常~上昇が認められる。CAIS,PAISともに核型は46XYであるため,染色体検査の結果が確定診断となる。
CAISは,外見上は完全な女性であり乳房の発達も認められ,外性器も女性型である。PAISは表現型が女性に近いものから男性に近いものまで様々であり,女性型外性器型(高度な尿道下裂,陰唇肥大,陰唇癒合など)と不完全型男性型(軽度~中等度の尿道下裂,二分陰囊,小陰茎)に分類される。不完全型男性型は思春期以降に女性化乳房を認める。CAIS, PAISに共通して内性器である子宮,卵管,腟上部は欠損しているが,精巣は鼠径部あるいは腹腔内に存在しアンドロゲンを分泌している。したがって,MRI検査により内性器の異常を確認するとともに,精巣の位置を確認することが重要である。
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