神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)は,神経内分泌細胞由来の腫瘍である。神経内分泌細胞が内分泌臓器以外に全身に分布しているため,全身の臓器に発生する。非遺伝性腫瘍が多いが,多発性内分泌腫瘍症1型などの遺伝性疾患の部分症として発症することもある。NENは10万人当たり2.835人の発生率で,比較的稀な腫瘍であるが,近年増加傾向にある。ホルモン産生症状の有無により機能性と非機能性に大別され,機能性腫瘍としてはインスリノーマ,ガストリノーマなどがある。
NENは腫瘍血管が豊富であることが特徴で,画像診断上,腫瘍濃染像を示すことが多い。診断には,切除や生検による病理診断が不可欠である。病理学的に高分化型神経内分泌腫瘍(NET)と低分化型神経内分泌癌(NEC)にわけられ,Ki-67指数によってG1(<3%),G2(3~20%),G3(>20%)に分類される。
切除可能であれば切除し,内視鏡治療も考慮する。ホルモン症状を有する機能性NETに対しては,症状をコントロールする目的でソマトスタチンアナログを用いる。腫瘍制御を目的とする場合,ソマトスタチンアナログ,分子標的治療薬,細胞障害性抗癌剤が用いられる。また,これらの治療が有効でない場合に,放射性核種標識ペプチド治療(PRRT)を検討する。NECに対しては,切除可能であれば切除し,切除不能例にはシスプラチンやカルボプラチン等のプラチナ製剤による化学療法を行う。
ホルモン症状をコントロールする目的で使用するソマトスタチンアナログには,オクトレオチド酢酸塩とランレオチド酢酸塩がある。
腫瘍制御を目的とした場合の薬物療法は,ソマトスタチンアナログとしてオクトレオチド酢酸塩とランレオチド酢酸塩,分子標的治療薬としてエベロリムス,細胞障害性抗癌剤としてストレプトゾシンが用いられる。消化管NETに対する薬物療法は,ソマトスタチンアナログと分子標的治療薬が中心で,細胞障害性抗癌剤は両治療が有効でない場合の選択肢という位置づけになる。また,腫瘍量が少なく進行が緩徐な場合はソマトスタチンアナログを,それ以外が分子標的治療薬となるが,進行がゆるやかな回腸NETではソマトスタチンアナログが中心となり,進行の速い直腸NETや胃NETでは分子標的治療薬をより積極的に検討する必要がある。
PRRTは,腫瘍細胞表面に発現しているペプチドを標的とし,体内に放射性同位元素を投与して腫瘍を破壊する治療である。ソマトスタチン受容体陽性NETに対して,PRRT(ルテチウムオキソドトレオチド)が2021年に保険適用となった。その他の治療で効果が得られないNET患者に対して使用する。
NECに対する薬物療法は,小細胞肺癌に準じたプラチナ製剤を含む併用療法が推奨されている。シスプラチン+エトポシド併用療法,シスプラチン+イリノテカン併用療法,カルボプラチン+エトポシド併用療法などを選択する。
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