食道憩室(esophageal diverticulum)とは食道壁の一部が囊状に突出している状態を言う。①発生時期,②組織学的,③発生原因,④発生部位により分類される(表)。X線造影検査による発見頻度は0.5~1.3%であり,稀な疾患ではない1)。
一般的に無症状であることが多く,上部消化管検査時に偶然発見される。
咽頭食道憩室(Zenker憩室)は,初期には咽頭部の不快感が生じ,増大するにつれて嚥下困難,吐逆などを起こしやすくなる。吐逆による夜間咳嗽,誤嚥性肺炎を合併することもある。中部食道憩室,横隔膜上憩室では無症状なことが多いが,増大すると嚥下障害,食物の逆流,嘔吐,疼痛などを呈することがある。いずれの憩室も憩室炎,潰瘍を併発すると周囲に波及し,疼痛,出血,穿孔などをきたすことがある。
食道造影検査:最も有用な検査であり,部位と形態を描出できる。食道造影では囊状あるいは半球状に突出する特徴的な像を呈する。
上部消化管内視鏡検査:内視鏡検査では,憩室は囊状のくぼみとして認められる。大半は正常粘膜で覆われており,憩室に食物残渣を認める場合もある。食道憩室に食道癌を合併することもあり,適宜ルゴール染色を併用し,注意深く観察する必要がある(図1,2)。
食道内圧検査:Zenker憩室や横隔膜上憩室は食道内圧の上昇が成因に関与しているとされ,食道内圧検査を行い,運動機能異常の評価を行うことも必要である。
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