先天性と後天性にわけられる。先天性の場合,約4000人に1人の割合で発生し,8割以上が左側で,約8割が胎児診断される。Bochdalek孔ヘルニアと胸骨後ヘルニアがあり,後者は頻度が低く,治療も容易であるためBochdalek孔ヘルニアについて主に述べる。新生児に発症する横隔膜ヘルニアは肺低形成のため,重篤な呼吸障害を呈することも多い。一方で乳児期以降に発見される患者は,肺低形成は軽度である。後天性の場合,外傷などで横隔膜が損傷し発生する。
先天性横隔膜ヘルニア(CDH):胎児期エコーによる胎児診断率は75%で,健側肺の大きさなどによって重症度を判定する。出生後は呼吸障害などを呈し,胸部X線写真により胸腔内に腸管などが見られることで診断される。
後天性横隔膜ヘルニア:外傷後のCTなどで診断されるが,半数以上が外傷後1カ月以上経過後に診断,治療されている。受傷早期の画像診断では50%以上がわからない。
分娩は36週以降が望ましい。日本では帝王切開による分娩が多い。出生後は呼吸循環管理,特に肺高血圧,心不全の評価と管理を行い,肺動脈の過敏性が高い時期を超えた時点で早期に手術を行う1)。呼吸管理は深鎮静のもと,high frequency oscillationへの移行,一酸化窒素の吸入などが行われている。肺高血圧に伴う心不全に対して適切な管理を行うことが非常に重要である。呼吸管理は肺にダメージを与えないように,気道内圧を上昇させず,高二酸化炭素血症を容認する呼吸管理(gentle ventilation)が主流となり,長期予後は改善している。このような管理でも状態を安定させられない場合は,人工肺装置ECMOを使用し呼吸循環をサポートする。
肺高血圧,心不全が改善した時点で手術を行う。開腹手術を行う施設が多いが,胸腔鏡下に手術が行われることもある。腹腔臓器を胸腔内から腹腔内に環納し,横隔膜の欠損孔を閉鎖する。欠損孔が小さい場合は直接縫合閉鎖するが,欠損部が大きい場合はゴアテックス®パッチを縫着し閉鎖する。
外科的横隔膜の修復が唯一の治療法である。経胸的,経腹的アプローチがあるが,急性期には腹腔内臓器の確認も含めて経腹的アプローチが,慢性期には胸腔内での癒着を考慮して経胸的アプローチが適しているとされている。
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