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不妊症(挙児希望患者の取り扱い)[私の治療]

No.5137 (2022年10月08日発行) P.50

桑原慶充 (日本医科大学産婦人科学教室准教授)

登録日: 2022-10-05

最終更新日: 2022-10-04

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  • 不妊症は「生殖年齢の男女が妊娠を希望し,1年間避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず,妊娠の成立をみない場合」と定義される1)。妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わず,明らかな不妊因子が存在する場合は不妊期間の長短にかかわらず,早期からの検査および治療の対象となる。

    ▶診断のポイント

    女性年齢が34歳以下であれば挙児希望で1年以上,35歳以上40歳未満であれば半年間以上を経過している場合,40歳以上であれば子どもがほしいと思った時点で,不妊因子のスクリーニングを行うことが望ましい。不妊症の原因は多岐にわたり,複数の因子が混在している場合もある。卵胞発育・排卵が障害される排卵因子,卵管采での卵子のピックアップ障害を中心とした卵管因子,精子不動化の原因となる免疫学的因子,子宮内膜への着床不全をきたす子宮因子,受精障害,造精機能障害,性交障害などが挙げられ,どのステップの異常でも不妊となる。

    不妊症の検査と治療には夫婦の協力が必須であり,初めに夫同伴での説明の機会を設ける。十分な問診と婦人科基本診察を行い,合併症がある場合には原疾患を専門とする医師と連携する。さらに,頸部細胞診,夫婦感染症検査,風疹抗体検査,クラミジア抗体検査,甲状腺機能検査,耐糖能検査を実施し,プレコンセプションケアに努める。抗ミュラー管ホルモン検査は保険適用外であるが,卵巣予備能を反映し,治療をステップアップするタイミングや,排卵誘発法の選択に重要である。

    以降,月経周期の適正な時期に,対応する検査を計画的に進める。月経期のホルモン基礎値検査(LH,FSH,E2,PRL)は,排卵因子のタイピングに重要である。卵胞期には子宮卵管造影を実施し,卵管因子(疎通性,周囲癒着),子宮因子(Asherman症候群,子宮形態異常)の有無を確認し,卵胞発育を超音波検査でモニタリングする。排卵期には性交タイミングを指導し,ヒューナー試験を実施する。黄体期には卵巣ホルモン(E2,P4)を検査し,黄体機能不全の有無を確認する。

    特定された不妊因子によっては,二次精査(子宮鏡検査,腹腔鏡検査,MRI検査,CT検査,卵巣生検,精子不動化試験,GnRH・TRH負荷試験,自己抗体検査など)を追加する。いずれの検査においても異常を認めない場合は原因不明不妊として扱う。

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