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切迫早産に対するlong-term tocolysisについて

No.5138 (2022年10月15日発行) P.58

谷村憲司 (神戸大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター准教授)

米田 哲 (富山大学学術研究部医学系産科婦人科学准教授)

登録日: 2022-10-17

最終更新日: 2022-10-11

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  • 切迫早産に対するlong-term tocolysisはやめたほうがよいのでしょうか?
    富山大学・米田 哲先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    谷村憲司 神戸大学医学部附属病院 総合周産期母子医療センター准教授


    【回答】

    【一部の切迫早産については,妊娠期間延長によるプラス効果があるかもしれない】

    わが国では長らく切迫早産の徴候を認める症例に対して,long-term tocolysis(長期間にわたる子宮収縮抑制薬の点滴治療とここでは定義します)が行われてきました。その理由を推測するに,「子宮収縮は抑制したほうが本格的な陣痛開始が遅延し妊娠期間は延長するだろう」と信じられてきた点,および,妊婦自身が子宮収縮を自覚することに対して,「早く生まれるのではないか」という不安な気持ちがある点,これらが相重なってのことだろうと思われます。本当に子宮収縮を抑制することが,早産予防につながるのでしょうか。私自身も疑問を感じずにはいられません。

    切迫早産に対して,long-term tocolysisを行った場合,点滴治療中に陣痛発来し自然早産,点滴終了直後に陣痛発来して分娩,あるいは,点滴終了後に陣痛発来に至らずいったん退院,という3パターンとなります。少なくとも,いったん退院するケースでは,点滴治療の必要性に疑問を感じざるをえませんが,このような場合,子宮内の炎症がほぼ存在していないという特徴があるとされています1)。子宮内の炎症は,臨床症状と同じくらい分娩時期に関わっているので頷ける結果です。

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