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低血糖症[私の治療]

No.5146 (2022年12月10日発行) P.44

松久宗英 (徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター長/教授)

登録日: 2022-12-11

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  • 低血糖症は糖尿病治療に起因する場合が多いが,それ以外にもインスリノーマやインスリン自己免疫症候群,ACTH欠損症等の内分泌疾患,あるいは抗不整脈薬や抗菌薬などの薬剤性等の鑑別が必要となる。低血糖は一般に血糖値が70mg/dL未満の状態を指し,自律神経系症状である動悸,発汗,蒼白,振戦,空腹感などで自覚される場合が多い。血糖値が50mg/dL未満に低下すると,眠気,錯乱,視野の異常,意識レベルの低下などの中枢神経系症状をきたす。さらに低下すると,意識レベルの低下により回復に第三者の介助が必要な重症低血糖となり,時には神経症状が後遺したり,不整脈や心血管事故を引き起こし,生命の危機に至る。

    ▶診断のポイント

    低血糖を疑う症状がある場合に,血糖値を測定することで容易に診断できる。頻回に低血糖を繰り返す場合は低血糖症状の無自覚化が生じるため,インスリン治療中の患者では,低血糖のリスクが高い運動後や入浴後などに血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose:SMBG)を行い,早期診断および予防をめざす。無自覚性低血糖の場合や,高齢,腎機能低下,HbA1c低値,インスリンあるいはインスリン分泌促進薬使用の高リスク者1)では,持続血糖モニター(continuous glucose monitoring:CGM)もその診断に有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    糖尿病治療に関連する低血糖では,高リスク者に対する低血糖の原因と対応についての患者教育を行い,低血糖リスクをできる限り低減した治療法を選択する。

    急性期治療では,患者自身が対応可能であれば10g程度のブドウ糖の経口摂取を行う。10gのブドウ糖摂取で,約50mg/dLの血糖値の上昇が見込まれる。15分ごとに血糖値を評価し,100mg/dL以上に回復するまで繰り返す。特に糖尿病性自律神経障害による胃運動障害が顕著な症例では,小腸からのブドウ糖吸収に時間を要するため,ジュースなどの飲料を摂取するか,あるいはブドウ糖を多めの水分と一緒に摂取する。ブドウ糖がない場合は,ブドウ糖と果糖の二糖類であるショ糖などで代用できるが,倍量の摂取が必要となり,また二糖類分解酵素阻害薬であるα-グルコシダーゼ阻害薬の内服時には推奨されない。

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