2007年に発表されたACC/AHA/ESC/WHF共同タスクフォースにより,従来に比べ心筋梗塞をよりいっそう迅速に診断できる高感度のトロポニン測定が推奨され,それ以降,超急性期の心筋梗塞の診断として高感度トロポニンの重要性が高まっている。しかしながら,高感度ゆえ微細な心筋傷害を検出し,特異度が低下しやすいという課題も報告されている。
12年に非ST上昇型心筋梗塞に対して行われた大規模試験APACEスタディの結果が公表され,来院後1時間での高感度トロポニン値により,100%近く非ST上昇型心筋梗塞患者を除外できたとの報告がされた1)。その結果をふまえ,15年にはESCによるガイドライン2)が作成され,非ST上昇型心筋梗塞が疑われる患者に対し,高感度トロポニンを用いた新たな診断アルゴリズムが発表された。それらの内容の主旨は,高感度トロポニンの来院時と1時間後の2点測定および,それらの変化値を用いることにより,特異度の問題を軽減しデータの質を高め,高感度トロポニンが特に非ST上昇型心筋梗塞症例を短時間で診断することに適していると述べられており,今後さらなる臨床応用が期待される。
【文献】
1)Reichlin T, et al:Arch Intern Med. 2012;172 (16):1211-8.
2)Roffi M, et al:Kardiol Pol. 2015;73(12):1207-94.
【解説】
1)寺倉守之,2)坂本哲也 帝京大学救急医学 1)講師 2)教授