原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,両側肺門リンパ節腫脹(bilateral hilar lymphadenopathy:BHL),肺浸潤,眼病変,皮膚病変,心臓病変など多彩な臓器病変,また,自然軽快するものから,治療によっても遷延・難治化するものまで多様な臨床経過を示す。呼吸器病変は臓器病変として最も頻度が高く,胸部X線所見によって5つの病期にわけられる。
診断は,臨床所見と画像所見に加えて,壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が組織学的に証明されて確立する。感染症など既知の原因による肉芽腫と,がんなどによる局所性サルコイド反応を除外する必要がある。組織診断が得られない場合には臨床診断基準を用いる。
Ⅳ型アレルギー反応(Th1が関与)が病態であることから,ステロイドが第一選択薬であるが,原因不明の疾患であり,完治できる薬剤はない。
治療の基本は,不可逆的な線維化の進行を抑え,良好な自然経過に導くことである。BHL(病期I期)は自然寛解することが多く,また,治療薬は副作用もあるため,治療の適応は慎重に判断する。
血清ACE値,気管支肺胞洗浄(BAL)液所見,ガリウムシンチグラフィ所見は活動性の指標であっても,予後の指標にはならず,ステロイド投与開始の指標にはならない。自覚症状,呼吸機能障害,画像所見の悪化について判断し,これらがないか軽度の場合には内服ステロイドは投与しない。画像所見で,肺野粒状影や綿花状陰影が主体で,症状が咳嗽のみの場合には鎮咳薬のみで軽快することも多い。
肺病変(病期Ⅱ期,Ⅲ期)による息切れや咳嗽が強い場合には,内服ステロイドの適応を考える。ステロイド減量中,または中止後の再燃は稀ではない。
ステロイドの副作用である糖尿病の悪化,胃潰瘍,感染症,骨粗鬆症の対策を十分に行う。骨粗鬆症の予防にはビスホスホネート製剤が推奨される。
長期的なステロイド治療の副作用を軽減する目的やステロイド不応性の患者において,ステロイド代替薬として,メトトレキサートやアザチオプリンなどの免疫抑制薬や,ミノサイクリンやドキシサイクリンなどの抗菌薬,インフリキシマブなどのTNF阻害薬を用いる場合もあるが,わが国では本症に保険適用はない。
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