外陰・腟に起こる炎症はしばしば合併し,両者を合わせて外陰腟炎と呼ぶこともある。約70%は細菌や真菌,ウイルスの感染によるものだが,女性ホルモンの減少が原因で起こる萎縮性腟炎や,外的刺激やアレルゲンによる自己免疫性の接触皮膚炎など,病態は多岐にわたっている。本稿では細菌性腟症,萎縮性腟炎,接触皮膚炎を中心に述べる。
まずは視診で外陰・腟を確認し症状がある部位を同定する。腟分泌物,瘙痒感,疼痛などの症状は個別に評価する。可能な限り腟内pHの確認と鏡検を行う。
細菌性腟症の診断方法は複数あるが,本稿では簡便で実用的なAmselの診断基準について紹介する。①腟内pHが高い(生殖年齢女性の正常は4.0〜4.5),②腟分泌物の性状が薄く均一である,③腟分泌物に10%KOHを1滴加えたときにアミン臭がする,④腟分泌物の生食標本で顆粒状細胞質を有するclue cellが存在する,の4項目中3項目が満たされた場合には細菌性腟症と診断する。性的に活発な女性に対しては,淋病やクラミジアなどの性感染症も合併している可能性があり,それらの検査も考慮する。
高齢や女性ホルモンの分泌低下をきたすような治療を受けている症例で,腟の萎縮をきたし黄色の腟分泌物を伴う場合は萎縮性腟炎と診断する。
外陰の瘙痒感が強く,症状出現前に下着や石鹸を変えるなどアレルゲンを疑うエピソードがある場合は,接触皮膚炎と診断する。
細菌性腟症に対して,わが国で使用できる薬剤はメトロニダゾールである。連日の来院や自己による腟錠挿入が難しい場合は,経口投与を行う。腟洗浄は有効だが,繰り返すことにより腟内の常在菌が減少するため,頻回に行うことは控える。
萎縮性腟炎の場合は,エストロゲンの補充が治療となる。腟錠挿入が困難な場合には全身投与も考慮するが,静脈血栓塞栓症や長期投与となる場合にはエストロゲン依存性悪性腫瘍のリスク等もあるため,症例ごとに検討が必要である。また,保険適用外ではあるが,近年,腟上皮へのレーザー照射による治療の有効性が報告されている1)。
接触皮膚炎の場合は,原因と考えられるものを極力控えるように指導する。軽症であれば保湿剤もしくは非ステロイド性抗炎症外用薬やmild/mediumのステロイド外用薬を使用し,中等症以上であれば炎症の程度に合わせたステロイド外用薬の使用も考慮する。
治療開始1~2週間後に治療効果や検査結果を確認し,状況によっては各種検査の再施行や治療内容の変更を考慮することも重要である。
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