【質問者】吾妻安良太 日本医科大学武蔵小杉病院呼吸器内科教授
【ウイルス感染による免疫現象が病因に関与している可能性がある】
抗MDA5抗体は,皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)のサブタイプの筋症状がない無筋症性DMを含むDMに見出された疾患特異自己抗体です。抗MDA5抗体陽性DMは急速に進行する予後不良の急速進行性間質性肺疾患(rapidly progressive interstitial lung disease:RP-ILD)を高頻度に併発することが特徴で,臨床的には早期から強力な治療を行うこと,基礎的にはその病因を解明することが重要です。
対応抗原のMDA5は,RIG-Ⅰファミリーに属する蛋白で,ウイルス感染時にヘリカーゼドメインでウイルスを認識し,caspase-recruitment domainsを介したシグナル伝達を介してⅠ型インターフェロン(IFN)を誘導し,抗ウイルス作用を発揮します。MDA5は特にピコルナウイルス属を認識することが明らかにされており,ウイルス感染が病因に深く関わっていることが疑われています。これまで,同病態が秋から冬の時期,淡水に近い地域で高頻度であるとの報告がそれを示唆しています。
その対応抗原の特徴からはI型IFN経路の活性化が病態形成に重要な役割をはたしていると考えられており,抗MDA5抗体陽性血清中のIFNα濃度およびIFNγなどのIFN関連サイトカイン濃度の上昇や末梢血単核細胞でのⅠ型IFN遺伝子シグニチャー(特定の状況に特徴的な遺伝子群の発現パターン)発現の上昇が報告されています。
残り630文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する