血糖降下薬として開発されながら腎保護作用や心保護作用も明らかになり、適応症が増えていくSGLT2阻害薬だが、さらに新たな可能性を示唆するデータが現れた。「尿路結石」の抑制である。KI Rep誌に阿南 剛氏(四谷メディカルキューブ、東北医科薬科大学)らが2月3日付で報告したリサーチレター を紹介したい。
解析対象は、日本にてDPC病院を受診した男性570万例余と女性620万例強である。これらの匿名診療等関連情報(DPCデータ)を横断解析した。
まず糖尿病と尿路結石の関連を見ると、糖尿病診断例では非診断例に比べ、尿路結石診断の割合が有意に高かった。男性におけるオッズ比(OR)は1.12(95%信頼区間[CI]:1.10-1.13)、女性では1.70(1.67-1.73)である。
次に糖尿病例に限定し、血糖降下薬と尿路結石診断の関連を検討した。
するとSGLT2阻害薬「服用」例では「非服用」例に比べ尿路結石ORが、男女とも有意に低値となっていた(男性:0.95、女性:0.91)。
対照的にDPP-4阻害薬やSU剤、グリニド系薬、グリタゾン系薬、αグルコシダーゼ阻害薬の服用例ではいずれも非服用に比べ、男女を問わず尿路結石ORは有意高値だった。
SGLT2阻害薬は糖尿病以外にも使用されるため、それら非糖尿病例でも検討したところ、男性ではやはり「服用」に伴い「非服用」に比べ尿路結石ORは0.42の有意低値となっていた。一方女性では、0.90の低値傾向にとどまった(有意差なし)。
SGLT2阻害薬使用例における尿路結石低頻度は、外国コホートにおけるGLP-1受容体アゴニストとの経時的比較でも報告されており[Kristensen KB, et al. 2021]、阿南氏らはSGLT2阻害薬が尿路結石を減少させた可能性を考えているようである。
機序としては、ラットで確認されているSGLT2阻害薬の抗炎症作用[Anan G, et al. 2022]、あるいはpH上昇作用の可能性を指摘している。
なおSGLT2阻害薬群は尿路結石リスクを減少させないと結論する、ランダム化比較試験27報(5万5000例強)を対象としたメタ解析も存在する[Cosentino C, et al. 2019](阿南氏らはサンプル数が十分でなかった可能性を指摘)。また米国有害事象自主的報告データベースの解析からは、SGLT2阻害薬に伴う尿路結石リスク増加の可能性を示唆する報告もある[Zhou X, et al. 2021]。
結論は、現在進行中のSGLT2阻害薬をプラセボと比較中のランダム化比較試験"SWEETSTONE"の結果を待たねばならないようだ[ClinicalTrials. gov]。
本研究は日本学術振興会と公益財団法人鈴木謙三記念医科学応用研究財団からのサポートを受けた。