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心疾患合併妊娠[私の治療]

No.5157 (2023年02月25日発行) P.50

桂木真司 (宮崎大学医学部産婦人科主任教授)

登録日: 2023-02-22

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  • Ⅰ.大動脈解離 

    大動脈解離は心血管系疾患による妊産婦死亡の約40%を占めるが,その多くは高身長などのマルファン症候群の特徴を持たないものが多い。しかし上記の複数例で,家族歴にて突然死,大動脈解離が指摘されている。

    ▶診断のポイント

    胸背部痛,既知の大動脈疾患,四肢脈拍触知不良,心雑音,血圧左右差>20mmHgから急性大動脈解離を疑い,循環器内科に即コンサルトする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    急性大動脈解離においては,胎児より母体生存を優先とする治療方針を一貫する。造影CT検査で急性大動脈解離を診断し,急性A型解離であれば緊急手術を行う。マルファン症候群が疑われる女性では,妊娠前に遺伝カウンセリングを行い次世代への遺伝リスク,妊娠中の解離のリスクを説明する。マルファン症候群の診断がついた症例では,大動脈径≧40mmで大動脈径の拡大が0.5mm/年を超えるものは,妊娠前に自己弁温存大動脈基部置換手術を考慮する。

    ▶治療の実際

    【急性大動脈解離】

    妊娠22週以上で新生児の生存の可能性があれば帝王切開を先に行い,その次に大血管の修復術を行う。妊娠22~26週で児の未熟性が高い場合に,子宮内に胎児を入れたまま修復術を行うことを選択する際は,手術中の循環動態の変化により胎児死亡が起こる可能性を説明する。胎児への薬剤,手術の影響を産科医が説明した上で,外科手術手技,術中麻酔薬は非妊娠時と同様に行う。

    一手目 :〈妊娠12週未満〉非妊娠時と同様の低体温,人工心肺の還流量での外科手術

    一手目 :〈妊娠13~26週〉normo-hypothermia(胎児のために通常より温度を1℃くらい高く),人工心肺の還流量は1.2~1.3倍程度に増加(妊娠中の循環血液量増加のため)しての外科手術

    抗凝固薬のヘパリンは,胎盤移行性がなく,胎児脳出血のリスクもないため,一般成人と同用量を用いる。

    【マルファン症候群,マルファン類縁疾患】

    大動脈径≧35mm,血管径の変化,血圧を参考に血管保護のために妊娠前よりカルベジロールを少量より開始する。妊娠初期でのつわり時期の低血圧に注意する。妊娠前,妊娠16週,30週,36週,産褥期に心エコー,X線,BNP,心電図による心機能評価を行う。分娩は,大動脈径40mm以下では硬膜外麻酔下の経腟分娩を基本とする。ロイス・ディーツ症候群では分娩後の子宮筋層の裂傷,弛緩出血に注意する。血管型エーラス・ダンロス症候群では組織脆弱性が高く,腹腔内での手技を優しく,縫合も組織裂傷を危惧し愛護的に行う。

    【妊娠中にカルベジロール投与を開始する場合】

    一手目 :アーチスト1.25mg錠(カルベジロール)1回1錠1日1回(朝食後),1週間後に1回1錠1日2回(朝・夕食後)に増量。自覚症状,血圧の変化,胎児心音への影響を観察。余裕があれば入院の上導入することを勧める。さらに1週間後に2.5mg錠1回1錠1日2回(朝・夕食後)に増量(維持量)

    胎児,新生児への影響:カルベジロールはαβ遮断薬で,2018年の日本循環器学会のガイドラインでは「使用経験より妊娠中の使用はおそらく安全と考えられる」と記載されているが,添付文書上は禁忌となっている。母体心拍が下がり,心拍出量が低下するための胎児発育遅延,新生児低血糖のリスクを説明する。

    二手目 :妊娠中の胎児発育を慎重に管理

    三手目 :新生児の血糖測定,無呼吸発作管理に酸素飽和度モニターを出生後3日間装着

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