2014年に成立した「難病の患者に対する医療等に関する法律」において,「難病は発病の機構が明らかでなく,治療方法が確立していない希少な疾病であって,長期の療養を必要とするもの」と定義されている。難病(2021年11月現在338疾患)のうち神経難病は約1/4を占めており,障害の程度が重度のため本人の苦痛や家族の介護負担が大きな疾患が多い。
神経系は脳と脊髄を指す中枢神経と,それ以外の神経系を指す末梢神経に分類される。末梢神経は,本人の意思に関わって働く体性神経と,本人の意思とは関係なく働く自律神経に分類される。神経難病では単一の系統を侵す疾患,複数の系統を侵す疾患,単一の系統で発症するが進行に伴い複数の系統に進展する疾患がある。
神経難病には神経変性疾患,神経免疫性疾患,感染症,代謝異常,遺伝性腫瘍性疾患が含まれる。障害のため通院困難となる筋萎縮性側索硬化症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,脊髄小脳変性症,多系統萎縮症等が,在宅で遭遇しやすい神経変性疾患である。
罹患した神経系に関連する臓器が機能障害に陥ることにより,多彩な併存症状を呈する。
神経難病による活動低下に伴う廃用症候群は,予後とQOLに重大な影響を及ぼす。
神経難病患者の苦痛(特にスピリチュアルペイン)は,診断以前あるいは診断時点から生じることがある。このような患者には早い段階からアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を通じ,意思決定のための支援を行うことが必要である。
神経難病の併存症状に対する適切な治療は,患者の日常生活に寄与し,QOLの向上をもたらすため,ACPに添って早期から介入することを心がける。
神経難病の中には発病機構が明らかにされ,治療方法に関する研究が進んでいる疾患がある。診療担当者は最新の知識を修得し,専門医療機関と連携し,治療の可能性を見い出すことも求められる。
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