わが国では健診受診者の30%弱[Eguchi Y, et al. 2012]、非肥満例に限定しても15%に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が認められる[Nishioji K, et al. 2015]。
このNAFLDはいまや肝疾患にとどまらず、心血管系疾患の予知因子/危険因子としても注目されているが[Mantovani A, et al. 2021]、それに加え細小血管症のリスクも高まるようだ。7万人弱の観察データから明らかになった。5月31日にJ Intern Med誌掲載の、Thomas Ebert氏(スウェーデン・カロリンスカ研究所)らによる報告を紹介したい。
同氏らが解析対象としたのは、スウェーデン全国レジストリから抽出された、NAFLDと初診断された外来患者6785例と、年齢・性別・居住地区をマッチさせた非NAFLD対照6万1136名である。NAFLD以外の肝疾患合併例、あるいはアルコール濫用例、また細小血管症をすでに発症していた例は除外されている。
平均年齢は53歳、2型糖尿病合併率はNAFLD群では12.6%、対照群が2.0%だった。
これらを約5年間観察し、細小血管症(慢性腎臓病[CKD]、網膜症、神経症)の発症リスクを比較した。
その結果まず発症率は、NAFLD群では10.8/1000人年、対照群では4.7/1000人年だった。
NAFLD群におけるハザード比(HR)は2.37(95%信頼区間[CI]:2.14-2.63)の有意高値である。
細小血管症を個別に見ると、NALFD群ではCKD、網膜症とも発症リスクは対照群に比べ有意に高かったが、神経症は発症数が少なかったため比較できなかった。
またNAFLD群における細小血管症発症リスク上昇は、「2型糖尿病」と「高血圧」、「脂質異常症」で補正後も有意だった(HR:1.45、95%CI:1.28-1.63)。さらに「肥満」を補正後のモデルでも、リスク上昇は有意だった。Ebert氏らはこのような代謝異常で補正後も、NAFLDと細小血管症発症間の相関は弱まらなかった点を強調している。
同氏らはNAFLDと細小血管症発症の因果関係についてさらなる検討が必要としながらも、因果関係が存在すると考えているようである。
いずれにせよ、「NAFLD例のリスク評価においては細小血管症も考慮すべきである」というのが本論文の結論だった。
本研究には特記すべき資金提供はないとのことだ。