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子宮破裂[私の治療]

No.5175 (2023年07月01日発行) P.41

服部響子 (北里大学医学部産婦人科学(産科学))

登録日: 2023-06-28

最終更新日: 2023-06-27

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  • 子宮破裂とは,分娩経過中や,時に妊娠中にもみられる子宮の裂傷を言い,裂傷の程度により,「全子宮破裂(筋層〜漿膜まで断裂)」と「不全子宮破裂(筋層のみ断裂)」に分類される。わが国での発生頻度は0.015%と稀で,ほとんどが子宮手術の既往のある子宮破裂「瘢痕子宮破裂」で70%以上を占め,そのうち2/3が既往帝王切開後である1)

    ▶診断のポイント

    徴候として子宮体下部収縮輪(Bandl収縮輪)の上昇,過強陣痛,激しい腹痛,不穏状態,胎児機能不全などがみられるとされるが,破裂の程度や部位により多彩な症状を呈する。特異的な症状はないため,子宮破裂を疑うことが重要となるが,初発症状として異常胎児心拍パターンの出現が多い。常位胎盤早期剝離など,他の胎児機能不全となる病態との鑑別が必要で,母体のバイタルサインや外出血の有無の確認,経腹超音波検査で子宮内・外の環境の把握をする。focused assessment with sonography for obstetrics(FASO)により,①子宮周囲,②ダグラス窩のエコーフリースペース,③脾腎境界,④モリソン窩,⑤下大静脈径,を評価する。分娩後であれば,内診,腟鏡診で外出血の観察や頸管裂傷からの子宮下部の破裂の有無に注目し,診察する。必要時は造影CT検査などの追加を検討する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    母体が急速に出血性ショックに至る可能性があり,本症を疑ったら早期からの全身管理が重要である。また,診断時は速やかな開腹手術(帝王切開術,子宮摘出術など)が必要で,いつでも手術室,麻酔科,新生児科に迅速に連絡できる体制を整えておく必要がある。破裂の程度や部位により修復(裂傷部縫合)もしくは子宮摘出を選択する。緊急対応となるため,患者,家族への説明時間が十分にとれない場合があるが,可能な限り母児の状況,緊急手術の必要性,大量出血に伴う大量輸血の可能性,場合によっては子宮摘出となる可能性を説明し,同意を得るよう努める。

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