「中性脂肪低下」を謳った広告をよく目にするオメガ3脂肪酸(EPA、DHA)サプリだが、現在用いられている用量ではLDLコレステロール(LDL-C)を上昇させる可能性がある。90のランダム化比較試験(RCT)をメタ解析した結果、明らかになった。生活指導によりトリグリセライド(TG)は低下するがLDL-C濃度のみ高い場合、このようなサプリ常用が潜んでいるかもしれない。Journal of the American Heart Association誌6月2日掲載の、Tianjiao Wang氏(中国・マカオ科学技術大学)らによる論文を紹介したい。
解析対象となったのは、DHA/EPA(それぞれ単剤、または併用)サプリによる脂質代謝への影響を対照群と比較した、RCT 90報(7万2598例)である。「観察期間<4週間」や「各群<20例」の試験、また脂質代謝への作用を検出できる十分な検出力のない試験は除外されている。
対象の平均年齢は試験により「25.7~70.0」歳、BMI平均値も「22.8~34.6kg/m2」の幅があった。
また90試験中52報(57.8%)は、脂質異常症を対象としていた(全例スタチンかフィブラートを服用)。対照群の大半は植物性油を摂取し、最多はオリーブ油だった。
全90試験の観察期間中央値は13.0週間である。
これらを併合して解析したところ、「DHA/EPA」群の「TG」と「非HDLコレステロール」濃度はほぼ用量依存性に、対照群に比べ有意に低値となっていた。
一方「LDL-C」濃度は用量依存性の「逆Jカーブ」を描いた。すなわち「DHA/EPA」摂取用量がおよそ2mg/日に至るまでLDL-C濃度は上昇を続け、そこから低下するものの1日摂取量が3g/日を超えるまでは対照群に比べ有意高値だった。さらに3gを超えても1日摂取量が約5gに達するまでは、対照群に比べ高値という傾向が認められた。
なお市販されているDHA/EPAサプリの推奨摂取量は、1g未満がほとんどである。
上記におけるLDL-Cの上昇幅は最大でおよそ8mg/dL、冠動脈疾患・脂質異常症のいずれも認めない例に限れば最大10mg/dL強の上昇だった。
「ちょっと中性脂肪が心配だから」という例ほど、DHA/EPAサプリ摂取に伴うLDL-C上昇幅が大きい可能性がある。
本研究はマカオ科学技術発展基金とマカオ科学技術大学から資金提供を受けて実施された。