IgA血管炎は別名ヘノッホ・シェーンライン紫斑病であり,臨床症状としては紫斑のほかに,腎炎,腸管浮腫などの消化器症状,関節痛,神経障害などをきたす。病態としては,細動脈-毛細血管を主座とする免疫複合体による血管炎(小型血管炎)である。
皮疹は両下肢遠位中心の触知可能な点状の紫斑を呈する。典型的な紫斑や消化器症状などを伴う場合においては,皮疹の生検によりIgAの沈着した血管炎,すなわち小血管周囲の多核白血球を中心とした炎症性細胞浸潤を証明することにより確定診断となる。腎炎のみの場合には,腎生検により確定診断となる。光学顕微鏡所見において,IgA腎症に類似する巣状分節性からびまん性全節性までのメサンギウム増殖性糸球体腎炎が主であるが,半月体形成の頻度はIgA腎症より高い。病初期には,血清IgAは40~60%で上昇が認められる。血漿第ⅩⅢ因子活性は3/4の症例で低下が認められ,その低下は重症度と相関する。血小板数減少や他の凝固異常は伴わない。
罹患臓器,病期により治療方針は大きく異なるが,治療の強度は合併する臓器障害の中で最も重篤なものが規定することとなる。
皮疹のみの場合には経過観察とすることが多い。紫斑は重力効果により下肢に出現することが多いため,安静,下肢挙上,着圧ストッキングによる圧迫などを行う。
腸管浮腫や神経障害を伴う場合においては,副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン1mg/kg/日など高用量)を用いて改善が認められれば,その後速やかに減量し,中止を試みる。
腎症を伴う場合においては,その治療方針は「エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020」1) が参考になる。尿検査で血尿のみが認められ,eGFR 30mL/分/1.73m2以上かつ尿蛋白0.5g/日未満の場合には基本的に経過観察とする。eGFR 30mL/分/1.73m2以上かつ尿蛋白0.5g/日以上の場合には可能な限り腎生検を行い,その組織学的重症度分類を同定,さらに臨床的重症度分類を加味して治療を決定する。ステロイド加療とレニン-アンジオテンシン系阻害薬の投与を行う。eGFR 30mL/分/1.73m2未満の場合には基本的にレニン-アンジオテンシン系阻害薬の投与のみを行うが,活動性の腎炎所見が想定される場合(腎生検で活動性病変や急速進行性の腎機能障害がある等)には,副腎皮質ステロイドなどの免疫抑制療法を行う。
また,上気道炎後に尿所見の増悪が認められる症例においては,口蓋扁桃摘出術を考慮する。
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