左室駆出率(EF)の高低を問わず心不全治療に必須となった感のあるSGLT2阻害薬だが、ランダム化比較試験で示された「有用性」に比べ、実臨床における「安全性」は必ずしも明らかではなかった。ESC Heart Failure誌は8月7日、この点に関する米国の観察研究を「短信」として掲載した。報告者は米国・ミシガン大学のBryan O. Pérez Martínez氏ら。
今回の解析対象は、ミシガン大学心不全クリニックにて外来でSGLT2阻害薬を開始後、30日間の観察が可能だったHFrEF患者200例である。
平均年齢は60.8歳、男性が64.5%を占めた。EF平均値は27%、NYHA分類は「Ⅱ」度が最多で51.5%、次いで「Ⅲ」度の33.5%だった。ループ利尿薬用量はフロセミド換算で93.3mgである。
糖尿病合併率は52%、血清クレアチニン平均値は1.16mg/dLだった。
これらを対象に、SGLT2阻害薬開始後の服薬中止と急性腎障害(AKI)の発生頻度を観察した。
その結果、服用開始後30日間のSGLT2阻害薬中止率は9%(18例)だった。服薬中止理由で最多だったのは「カンジダ症」(33%)、そして「低血圧」(28%)、「AKI」(22%)が続いた。
また服薬中止にまで至らなかったものまで含めると、AKIの発生率は11%(22例)だった。
なお9.5%(19例)ではループ利尿薬が減量され、0.5%(1%)では増量が実施されていた。
Martínez氏らはHFrEF例への外来SGLT2阻害薬開始後短期の「忍容性は高く」、「AKI頻度は低い」と評価した。
本報告の利益相反は開示されていない。