性分化疾患とは,ヒトの6つの性 (染色体の性,性腺の性,内性器の性,外性器の性,性同一性,法律上の性)のうち,性染色体,性腺,内性器,外性器のいずれかが非定型的な先天的体質を指す。停留精巣や尿道下裂から,非典型的な外性器で見つかる複雑な症例まで多彩な症状を呈し,産婦人科においては総排泄腔遺残症,ターナー症候群などの性染色体異常症,46,XX性分化疾患,卵精巣性性分化疾患など様々な病態を扱う。大部分の症例でホルモン補充療法や外性器形成術を必要とし,長期にわたる内科的あるいは外科的なフォローが重要となる。
性分化疾患が疑われた際には,原発性無月経や乳房発育不全などの二次性徴の欠落症状や性毛(腋毛,恥毛)の欠如に関する問診・視診,視床下部・下垂体・卵巣に対するホルモン刺激試験などの内分泌学的検査,超音波・CT・MRI・膀胱鏡・尿道造影・腹腔鏡などによる画像検査,染色体検査・SRY遺伝子検査・遺伝子解析などの遺伝学的検査,性同一性(性自認)に関する心理学的検査などを組み合わせて鑑別診断を進めていく。
産婦人科単独での診療は困難なことが多く,小児科,泌尿器科,内科,小児外科,形成外科,精神・神経科,臨床遺伝部門などと連携し,看護師,臨床心理士も交えた多職種による包括的かつ診療科横断的なチーム医療であたることに留意する。また,当事者会が存在する疾患もあり,医療現場では得られない生活情報を共有できるため,積極的に紹介する。
外陰形成術,腟口形成術,造腟術,性腺摘除術,尿道形成術など,性に沿った形成術を他診療科と連携して行う。
hCG/FSH補充療法,女性ホルモン補充療法,黄体ホルモン補充療法,カウフマン療法など,病態,重症度に沿った治療を内科部門とも協力して行う。
本人や両親が希望した場合,次子や次世代の再発率などの遺伝学的情報を臨床遺伝専門医と連携して伝える。その際には精神・神経科による心のケア,サポートも重要となる。
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