リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)は,妊娠可能年齢の女性に好発する,慢性進行性全身性の希少疾患である。肺,体軸リンパ節などで平滑筋様細胞(LAM細胞)が増殖し組織を障害する。肺では無数の囊胞を形成し呼吸不全に至る。気胸を高頻度に認め,乳び胸水を生じることもある。胸郭外では血管筋脂肪腫(AML),リンパ脈管筋腫,リンパ節腫大,乳び腹水,リンパ浮腫等を認める。孤発性LAM(S-LAM)と結節性硬化症(TSC)に伴うTSC-LAMに分類される。TSC1,TSC2遺伝子変異によりラパマイシン標的蛋白質(mTOR)の活性が亢進している。厚生労働省が定める指定難病である。
LAMの診断は臨床所見,画像所見(高分解能CT),病理,細胞学的所見に加え,TSC,AML,乳び胸水・腹水,後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫,血清VEGF-D(vascular endothelial growth factor-D)高値(≧800pg/mL)により行われる。
LAMの治療は,LAM細胞の増殖抑制とそれに伴う組織の破壊への対策が基本である。mTOR阻害薬はLAM細胞の増殖を抑制し呼吸機能低下を抑制,腎AMLや乳び胸水または腹水への効果が期待される。わが国ではmTOR阻害薬として,LAMに対してラパリムスⓇ (シロリムス),TSCに対してアフィニトールⓇ(エベロリムス)が薬事承認されている。気胸やAMLに対して胸腔鏡治療,カテーテルによる治療,外科的治療などが行われることもある。呼吸不全に対して呼吸リハビリテーション,在宅酸素療法,適応があれば肺移植も考慮する。
ラパリムスⓇ治療においては,間質性肺炎の発症,感染症の発症増悪,悪性腫瘍,脂質異常症,創傷治癒不良,蛋白尿,授乳に注意する。ラパマイシン誘導体に過敏症の既往のある患者,妊娠または妊娠している可能性のある女性への投与,生ワクチンの接種は禁忌である。
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