身体活動増加が降圧に有用なのは言うまでもないが、肥満高齢者では日常生活内の座位時間を30分短縮するだけで収縮期血圧(SBP)が6.5 mmHg以上低下することが、ランダム化比較試験 "I-STAND"の結果、明らかになった。米国カイザーパーマネンテ・ワシントン健康研究所のDori E. Rosenberg氏らが3月27日、JAMA Network Open誌で報告した。
今回の解析対象は、米国在住のBMI「30-50 kg/m2」で「60-89歳」、かつ「1日6時間以上座位」で過ごすが、自力起立が可能で1ブロックは歩行できた283例である。民間保険会社契約クリニックを1年以上受診中例から抽出した。がんや認知症、重篤な精神疾患罹患例は除外されている。
平均年齢は68.8歳、女性が65.7%を占めた。BMI平均値は34.9 kg/m2、51.9%は高血圧診断歴があった。うち69.3%が降圧薬を服用していた。1日の非就寝時間は1週間平均でおよそ15.5時間だった。
これら283例は日常生活中の起立時間増加を目指す「I-STAND」群と「対照」群にランダム化された。「I-STAND」群では手首装着型加速度計とスタンディングデスクが貸与され、参加者ごとに1日の座位制限目標時間が設定された。また加速度計記録のフィードバックを開始時と3カ月後に受けた。さらにそれまでの座位習慣を続けぬよう、生活中でも工夫をこらした。「対照」群では「I-STAND」群と同じ健康指導のみを受けた。そのうえで両群間の6カ月後「1日座位時間」(1次評価項目)と「血圧」(2次評価項目)を比較した。
・座位時間
その結果、「I-STAND」群は「対照」群に比べ、1日座位時間が31.85分有意に短くなっていた。
・血圧
同様に血圧も、「I-STAND」群は「対照」群に比べ、SBPが3.48 mmHg有意に低下していた(-6.67 mmHg vs.-3.19 mmHg)。一方、拡張期血圧(DBP)は「I-STAND」群の方が低下幅は小さかったものの、有意差とはならなかった(-1.32 mmHg vs.-1.58 mmHg)。
・安全性
「I-STAND」群は「対照」群に比べ、骨格筋系イベントが多かった(35 vs. 19)、また皮膚疾患発生数も多かった(9 vs. 1)。ただしいずれも重篤な有害事象ではなかった。
Rosenberg氏らは、今回、座位時間短縮で得られた降圧幅が有酸素運動と同等 [Gibbs BB, et al. 2021] と指摘。心血管系高リスク例では、短時間の座位短縮だけでも降圧には十分である可能性もあるとしている。
本研究は国立心肺血液研究所から資金提供を受けて実施された。