分娩時に産道でHSV-2に曝露されても99%の新生児は感染しない。
温度感受性HSV-2は胎児の体温で増殖できないが,UL13変異株は温度非感受性で新生児に産道で感染できる。
分娩後の新生児は温度感受性HSV-2に感染する。
新生児は免疫学的にも未熟であるため,感染症が重症化しやすい。特に,母親の産道や外陰部に存在する単純ヘルペスウイルス(HSV)感染は30%程度の死亡率と神経後遺症を起こす。母親の産道を経由する際,通常であればHSVに感染しうる状況であるが,HSVは産道では新生児に感染しにくい。本稿では,母親の外陰部に存在するHSVから新生児を守る機構を明らかにした。
世界的に新生児ヘルペスは万出産に対して1例であり,米国では3500例の出産に対して1例とされ,その半数はHSV-2によって生じている1)2)。4万23例の分娩期女性の子宮頸部と外性器から得られた検体を評価した研究では,202人の産道からHSVが分離されたが, HSV感染を発症したのは10人の新生児のみであった3)。このように,200人の母親の性器と産道にHSVが存在しても,190人が感染しない回避機構が備わっている。
ウイルスの温度感受性と病原性については,ライノウイルスは鼻かぜを起こすが,鼻の33℃では増殖するが,37℃では増えないので,通常,上気道炎や肺炎は起こさない。このように,温度によってウイルスの増殖性が低下することを温度感受性という。HSV-2は外陰部の33〜34℃に適応しており,39℃では増殖は低下するという温度感受性を有する。しかし,UL13遺伝子に変異が起こると39℃でも33℃同様に増殖ができる温度非感受性となる。
米国の経鼻インフルエンザワクチン(FluMist®)は温度感受性インフルエンザウイルス生ワクチンで,33℃の鼻で増えるが,上気道では増えず,インフルエンザ症状は起こさない。鳥インフルエンザはシアル酸の構造と鳥の体温40〜42℃に適応しており,人では増えにくいとされる。
残り2,080文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する