厚生労働省は5月8日、認知症と軽度認知症(MCI)の有病率と将来推計の研究結果を公表した。それによると65歳以上の人口に対する2022年の有病率(男女合計)は認知症が12.3%、MCIが15.5%で、合わせて27.8%。この有病率が今後も同じと仮定した場合、2050年の患者数は認知症が586.6万人、MCIが631.2万人で、合わせて1217.8万人になると推計している。
この研究は令和5年度老人保健事業推進費等補助金で行われたもの。事業担当者は二宮利治九州大学大学院教授(衛生・公衆衛生学)で、全国6カ所(福岡県久山町、石川県中島町、愛媛県中山町、島根県海士町、岩手県矢巾町=以上悉皆調査、大阪府吹田市=無作為抽出)から約8600人の住民を対象に実施。診断基準は認知症がDSM-ⅢR、MCIがPetersenの基準で、医師、保健師、心理士によるスクリーニング調査と専門医による診断の2段階で行われた。
その結果、65歳以上の有病率は認知症が12.3%、MCIが15.5%で合わせて27.8%だった。これを年齢階級別でみると65~69歳が認知症1.1%、MCIが6.9%。同様に75~79歳で7.1%、16.5%、90歳以上で50.3%、21.2%などとなった。認知症は80歳以降に有病率が急上昇し、85歳以上で男性に比べて女性の有病率が高くなる傾向にある。一方、MCIは85~89歳の27.5%まで緩やかに上昇した後、90歳以上でやや減少に転じる。男女別では85歳以上で男性のほうがやや高止まりの傾向にある。
この年齢階級別有病率が今後も一定と改定し、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を素に推計すると、患者数は2022年に認知症443.2万人、MCIが558.5万人だったのが2040年には584.2万人と612.8万人、2050年には586.6万人と631.2万人、2060年には645.1万人と632.2万人にそれぞれ増加するとしている。
2012年に行われた厚労省の前回調査では、有病率は認知症が15.0%、MCIが13.0%で合わせて28.0%。二宮氏は今回の結果を前回と比較して「大きな変化は認められなかった」としつつ、MCIから認知症に進展した者の割合が低下した理由として、①成人の喫煙率が全体として減少、②減塩の推進や降圧薬の普及で平均血圧が1970年代以降低下傾向にある、③糖尿病が強く疑われる者の頻度が、50歳以上の男性および70歳以上の女性では上昇傾向にあるが、50歳代および60歳代の女性では2010年以降徐々に低下傾向にある―などを挙げている。