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副甲状腺機能亢進症[私の治療]

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  • ▶治療の実際

    【外科手術】

    腺腫の場合,罹患腺腫を摘出する。過形成の場合,副甲状腺全腺を摘出し,一部を前腕筋内などに自家移植する。副甲状腺癌の場合は,再発すると予後不良であり,完全切除を心がける。このため術中PTH迅速測定で確認する。

    【内科的治療】
    〈自覚症状がない場合〉

    水分摂取と適切な運動を推奨し,Ca感知受容体作動薬の投与を検討する。骨粗鬆症には積極的に介入する。

    一手目 :オルケディア2mg錠(エボカルセト)1回1錠1日1~2回(朝または朝・夕,食前または食後)

    増量は2週間以上の間隔をあけて1段階ずつ行い,最大用量24mg(1回6mg 1日4回)まで。


    二手目 :〈一手目に追加〉ボナロン35mg錠もしくはフォサマック35mg錠(アレンドロン酸ナトリウム)1回1錠 週1回(起床時),またはベネット75mg錠もしくはアクトネル75mg錠(リセドロン酸ナトリウム)1回1錠 月1回(起床時)

    三手目 :〈処方変更〉ボノテオ50mg錠もしくはリカルボン50mg錠(ミノドロン酸水和物)1回1錠4週に1回(起床時)

    四手目 :〈処方変更〉ボンビバ注シリンジ(イバンドロン酸ナトリウム水和物)1回1mg 月に1回(できるだけ緩徐に静注)

    五手目 :〈処方変更〉リクラスト注(ゾレドロン酸水和物)1回5mg 年に1回(15分以上かけて点滴静注)

    六手目 :〈処方変更〉プラリア注(デノスマブ)1回60mg 6カ月に1回(皮下注)

    デノタスチュアブル配合錠(沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム)などのCa補給薬は併用しない。

    〈自覚症状がある場合〉

    消化器症状と多飲・多尿がある場合には,急速に状態が悪化する可能性があり,上記の骨粗鬆症に対する治療と並行して,高カルシウム血症に対する治療を行う。

    一手目 :生理食塩水1000~2000mL/日(点滴静注)

    脱水の程度や飲水量・全身状態を勘案して投与量を決定する。


    二手目 :〈一手目に追加〉エルシトニン注(エルカトニン)1回40単位1日2回(生理食塩水100mLに稀釈し1~2時間かけて点滴静注)

    筋注も可能であるが,通常は点滴静注する。アナフィラキシーショックに注意する。効果が減弱するため,2週間程度をめどに中止する。


    三手目 :〈一手目に追加〉オルケディア2mg錠(エボカルセト)1回1錠1日1~2回(朝または朝・夕,食前または食後)

    増量は2週間以上の間隔をあけて1段階ずつ行い,最大用量24mg(1回6mg 1日4回)まで。症状が強い場合や外来薬物治療ができない場合には,専門医の在籍する施設へ入院させる。

    【副甲状腺癌】

    初診時から著明な高カルシウム血症を呈している場合が多く,高カルシウム血症クリーゼのリスクが高い。

    一手目 :生理食塩水2000~4000mL/日(点滴静注)

    脱水の程度や飲水量・全身状態を勘案して投与量を決定する。


    二手目 :〈一手目に追加〉ラシックス注(フロセミド)1回20~40mg(静注)患者の状態に応じて適宜増減

    三手目 :〈一手目に追加〉エルシトニン注(エルカトニン)1回40単位1日2回(生理食塩水100mLに稀釈し1~2時間かけて点滴静注)

    四手目 :〈三手目に追加〉ゾメタ注(ゾレドロン酸水和物)1回4mg(生理食塩水100mLに稀釈し15分以上かけて点滴静注)

    再投与は1週間以上あける。効果発現に2~3日を要するため,即効性のある生理食塩水補液やエルシトニン注の併用が原則である。


    五手目 :〈三手目あるいは四手目に追加〉オルケディア2mg錠(エボカルセト)1回1錠1日2回(朝・夕,食前または食後)

    増量は2週間以上の間隔をあけて1段階ずつ行い,最大用量24mg(1回6mg 1日4回)まで。


    六手目 :〈三手目,四手目,あるいは五手目に追加〉デカドロン注(デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム)1回6.6mg 1日1~2回(生理食塩水100mLに稀釈し1時間かけて点滴静注)

    カルシトニンのエスケープ現象の抑制,Caバランス陰性化,食欲増進作用を期待して投与する。骨吸収を促進するので短期投与にとどめる。


    七手目 :〈骨転移を伴う場合,三手目あるいは四手目に追加,または処方変更〉ランマーク注(デノスマブ)1回120mg 4週間に1回(皮下注)

    デノタスチュアブル配合錠などのCa補給薬は併用しない。

    これらでもコントロールができない場合には,Caを含まない透析液を用いた血液透析を考慮する。

    ▶患者への説明のポイント

    治療の第一選択は罹患副甲状腺摘出手術である。このため的確な診断が重要であり,高カルシウム血症が継続する場合は,必ず専門家受診を勧める。

    日常生活においては,適切な食事・運動,および十分な飲水を指導する。天然型ビタミンDの不足は骨病変の増悪をもたらすため,食事からの摂取や日光への曝露を奨励する。また尿路結石症予防のため,水分摂取奨励,シュウ酸摂取制限に加えて,Caサプリメントと空腹時や食間のCa摂取を避けるが,食事からのCa摂取は奨励する。嘔気や多尿などの症状出現時には,急速に病状が悪化する場合があり,速やかに医療機関を受診するよう説明しておく。

    【文献】

    1)Yeh MW, et al:J Clin Endocrinol Metab. 2013;98(3):1122-9.

    2)Bilezikian JP, et al:J Clin Endocrinol Metab. 2014;99(10): 3561-9.

    中山耕之介(がん研有明病院糖尿病・代謝・内分泌内科部長)

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