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進行大腸癌[私の治療]

No.5263 (2025年03月08日発行) P.40

佐藤康史 (徳島大学大学院医歯薬学研究部消化器内科学分野(地域消化器・総合内科学)特任教授)

高山哲治 (徳島大学大学院医歯薬学研究部消化器内科学分野教授)

登録日: 2025-03-08

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  • 部位別がん罹患率で大腸癌は男性,女性ともに2位であり,男女合計では1位となっている。進行大腸癌は大腸の固有筋層を越えて浸潤し,リンパ節や他の臓器に転移したものであり,ステージとしてはⅡ〜Ⅳ期が該当する。進行大腸癌の5年生存率は,Ⅱ期で約80%,Ⅲ期で約70%であり,Ⅳ期においても化学療法の進歩により生存期間中央値は約3年,5年生存率は約20%へと劇的に改善した。

    ▶診断のポイント

    血便,腹痛,腹部腫瘤,腸閉塞などの症状が発見のきっかけになる。大腸内視鏡検査,病理検査(生検),画像検査(CT,MRI,PET-CT)などによる確定診断とステージングを行う。RAS,BRAF,HER2などの遺伝子変異や,MSI(マイクロサテライト不安定性)の有無などを明らかにしておくことが治療の選択や予後の判断に役立つ。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    Ⅰ~Ⅲ期では手術を第一選択とする。他臓器転移を認めるⅣ期では,薬物療法が主体であるが,原発巣,転移巣ともに切除可能であればいずれも切除する。原発巣の症状(出血,狭窄)があれば切除することもある。また,薬物療法により転移巣が制御できれば残存腫瘍切除を行うコンバージョン治療をめざす。

    切除不能大腸癌に対する初回化学療法は,バイオマーカーのステータスにより適切な薬剤選択をする。全身状態や臓器機能などが標準化学療法に対して適応となる患者に対して,MSI/MMR(ミスマッチ修復),RAS,BRAF V600E遺伝子検査を行う。MSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性)/dMMR(ミスマッチ修復機能欠損)であれば,免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)を選択し,non MSI-HかつRAS野生型で腫瘍占拠部位が左側なら,EGFR阻害薬(セツキシマブやパニツムマブ)と代表的なレジメンとしてFOLFOX(レボホリナート+フルオロウラシル+オキサリプラチン)かFOLFIRI(レボホリナート+フルオロウラシル+イリノテカン)を併用する。腫瘍占拠部位が右側もしくはBRAF変異型であれば,FOLFOXかFOLFIRIかFOLFOXIRI(レボホリナート+フルオロウラシル+オキサリプラチン+イリノテカン)にVEGF阻害薬(ベバシズマブ)を併用する。

    初回治療に効果がなくなった場合や副作用が強い場合は,二次治療に移行し,初回治療と異なる抗癌剤や分子標的治療薬の併用療法を後方ラインまで行う。BRAF変異がある場合は,BRAF阻害薬(エンコラフェニブ)とMEK阻害薬(ビニメチニブ)とEGFR阻害薬(セツキシマブ)の3剤併用療法を考慮する。標準治療の終了見込み時や標準治療の終了後に,ゲノム医療として包括的ゲノムプロファイリング(CGP)検査を行い,遺伝子異常の情報を得て臨床試験を含めた最適な薬物療法を検討する。

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