【Q】
原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism:PHPT)では続発性骨粗鬆症が生じることが知られており,PHPTを治療する理由のひとつとなっています。原因となる腫大副甲状腺の摘出によって,術後に骨密度の上昇を認めることがほとんどですが,術前の骨粗鬆症の程度や術後の状態によっては追加の薬剤治療を考慮すべきと考えます。どのような症例に追加治療を行うべきか,その時期や薬剤,治療の指標について多数の経験を有する隈病院・宮 章博先生のご教示をお願いします。【A】
PHPTは,副甲状腺の腺腫や過形成のために副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)が自律的に分泌される疾患です。PTHは骨代謝回転を亢進させる作用を有しており,PHPTでは骨形成と骨吸収の両者が亢進します。手術前後の骨代謝マーカーを調べると,骨吸収マーカーの骨型酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ-5b(tartrate-resistant acid phosphatase-5b:TRACP-5b)は,術後に当然速やかに改善しましたが,骨形成マーカーの骨型アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase:ALP)は術後徐々に低下し,術後6~12カ月で定常状態に落ちつきました。したがって,術後1年ほどは骨形成が亢進した状態のため,この時期にうまく骨形成が行われるように治療を考える必要があります。
1) Rubin MR, et al:J Clin Endocrinol Metab. 2008;93(9):3462-70.