株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

絶対過敏期の妊婦への投薬は?

No.4779 (2015年11月28日発行) P.64

西郡秀和 (東北大学病院産科・周産母子センター准教授)

小原 拓 (東北大学病院薬剤部准教授)

登録日: 2015-11-28

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

絶対過敏期(4~7週末)の妊婦で,38℃,湿性咳,全身倦怠感などの症状の場合と,8~15週末で,発熱,鼻汁,咳があり,急性気管支炎と考えられる場合の処方薬を。 (神奈川県 O)

【A】

ご提示頂いた病状は,まずは専門の医療機関に紹介して精査などをお願いすることになります。症状の原因などにより,必要な医薬品の投与内容が異なるからです。絶対過敏期であれば,まず安静,水分栄養補給を基本とします。やむをえず医薬品の投与が必要と判断した場合は,妊婦と家族に「(1)胎児にとって医薬品に対して感受性が高く,催奇性が理論的には問題になりうる時期であるが,医薬品を投与しなければ母体のみならず胎児に悪影響を及ぼすことも少なくないこと,(2)胎児への悪影響だけを心配して投薬をしない場合,母児を逆に危険にさらす可能性もあること,(3)胎児催奇性や毒性などの観点から胎児にできるだけ安全と報告されている薬剤を選択すること,(4)ヒトには出生時3~5%程度の先天形態異常のベースラインリスクがあること,(5)その医薬品投与によるリスクがベースラインリスクと比較して上昇するかどうか」など,医薬品の有益性や必要性を十分に説明する必要があります。
妊娠4~15週末までの妊婦への処方は,解熱・鎮痛薬としてアセトアミノフェン,鎮咳薬としてデキストロメトルファン臭化水素酸塩,抗菌薬としてペニシリン系やセフェム系であり,妊娠第1三半期の使用による先天形態異常の増加の報告はなく,妊婦に投与しやすいと考えられます。

【参考】

▼ 日本産科婦人科学会, 他, 編:産婦人科診療ガイドライン─産科編 2014. 日本産科婦人科学会, 2014.
▼ 伊藤真也, 他, 編:薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳. 改訂2版. 南山堂, 2014.
▼ Briggs GG, et al:Drugs in Pregnancy and Lac-tation. 10th ed. Lippincott Williams & Wilkins, 2014.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top