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頸動脈エコーで石灰化していない低輝度~等輝度プラークに効果的な薬剤は?【スタチンを中心に包括的に管理】

No.4781 (2015年12月12日発行) P.63

川尻剛照 (金沢大学医薬保健研究域医学系 臓器機能制御学・循環器内科准教授)

登録日: 2015-12-12

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

頸動脈エコーでみられる石灰化を呈していない低輝度~等輝度のプラークに対して退縮効果のある薬物はありますか。 (宮崎県 O)

【A】

頸動脈エコーは,CTやMRIと比較して手軽で,かつ非侵襲的であることから,動脈硬化の評価を繰り返し行うことが可能です。頸動脈内膜中膜複合体厚(intima-media thickness:IMT)やプラークの存在は,心血管イベントや脳梗塞の発症頻度と相関するため,臨床的に有用性が高い検査と言えます。不安定プラークに多い脂質成分や血栓は低輝度,線維成分は等輝度,動脈硬化の終末像である石灰化病変は高輝度として表現されますが,実際の組織はそれらが複雑に混在し,境界も不明瞭です。エコー輝度を定量化する指標として,integrated backscatter(IBS)やgray-scale median(GSM)があります。
低輝度~等輝度プラークは,脂質成分が多いと考えられており,その退縮に最も高い効果を発揮するのがスタチンです。しかも,強力なスタチンを高用量用いる積極的LDLコレステロール低下療法が有効です(文献1)。体外循環を用いて選択的にLDLを吸着し除去するLDLアフェレシスは,最も強力なLDLコレステロール低下療法ですが,家族性高コレステロール血症のIMTを有意に退縮することが示されています(文献2)。したがって,第一義的にLDLコレステロール低下療法が頸動脈プラークの退縮に重要であると考えられます。コレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブのIMT退縮効果は示されていませんが,スタチンを併用せざるをえない研究デザイン上の問題かもしれません。
スタチンを用いたIMT退縮試験のメタ解析の結果,エコー輝度の変化率とLDLコレステロールの変化量には相関を認めず,高感度CRPの変化量と相関がありました(文献3)。また,糖尿病治療薬であるアカルボースやピオグリタゾンはIMTを退縮させませんが,短期間でIBS値を改善させることが示され,同様に高感度CRPなどの炎症マーカーの変化率と相関が示されています(文献4,5)。
ロスバスタチンを用いたIMT退縮試験〔JART(Justification for Atherosclerosis Regression Treatment) extension study〕では,治療開始12カ月後にはIMTの退縮は認めませんでしたが,既にGSM値が有意に改善し,24カ月後にIMTの有意な退縮が示されました(文献6)。これらの結果は,動脈硬化の退縮に先行し,組織性状の改善が始まることを示しています。
いずれにせよ,頸動脈にプラークを有する症例の治療はスタチンを中心とし,糖尿病などの危険因子を包括的に管理することが求められます。

【文献】


1) Smilde TJ, et al:Lancet. 2001;357(9256):577-81.
2) Koga N, et al:J Intern Med. 1999;246(1):35-43.
3) Ibrahimi P, et al:Int J Mol Sci. 2015;16(5):10734-47.
4) Hirano M, et al:Circ J. 2012;76(6):1452-60.
5) Hirano M, et al:Atherosclerosis. 2009;203(2):483-8.
6) Nohara R, et al:Circ J. 2013;77(6):1526-33.

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