【Q】
リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica;PMR)と診断した患者さんにプレドニゾロンを投与開始したところ,症状が半分程度改善しましたが,1~2週間治療してもすっきりしません。一般的に治療抵抗性のPMR患者では巨細胞性動脈炎の合併,または感染症,悪性腫瘍,高齢発症関節リウマチ(RA)など,他の疾患でPMR様の症候を呈していないか再度確認するようにしていますが,沖縄県立中部病院・金城光代先生はどのようにアプローチされていますか。
【質問】
岸本暢将:聖路加国際病院アレルギー膠原病科医長 (SLE,関節リウマチ,小児外科)
【A】
1~2週後の治療反応性が不十分なとき,PMR類似疾患を再度考えるようにしています。すなわち,炎症性疾患(RA,結晶性関節炎,血管炎,筋炎),非炎症性疾患〔インピンジメント,スタチンによる筋痛(副反応)〕,感染症(感染性心内膜炎,骨髄炎,結核),悪性腫瘍(骨髄腫など),内分泌疾患(甲状腺機能低下症,副甲状腺機能亢進症),神経疾患(パーキンソン病),潜在性の骨折,を鑑別します。
治療反応性を知るため,客観的に評価する3つの指標を用います。すなわちPMR-VAS(visual analog scale),朝のこわばり,CRPまたは赤血球沈降速度(ESR)を,プレドニゾロン投与前と投与1~2週間後および4週間後に確認します。
PMR-VASは「プレドニゾロンの効果がまったくなし~最強効果ありまで考えると,今日のPMRの状態は0~100でどのくらいでしょうか」という質問で評価します。朝のこわばりは分単位で表現してもらいます。炎症反応も同時に評価して,3つの各項目すべてで70%以上の改善を認めれば治療反応性良好と判断します。プレドニゾロン投与1週間後で40~50%のPMR患者で改善を認め,4週間後では70~80%で改善すると言われます。つまり4週間後でも治療抵抗性なら,PMR以外の疾患をより強く疑うことが重要です。
プレドニゾロン治療抵抗性の場合は先に列挙した疾患すべてを同時に評価はしませんが,臨床的に疑う順番と緊急度を加味して精査を進めます。
巨細胞性動脈炎の合併があれば,少なくともプレドニゾロン30mg/日が必要と言われ,15mg/日への治療反応性は不十分です。側頭動脈炎症状・所見を呈さないときは,画像評価として側頭動脈の超音波評価や,頭蓋外の巨細胞性動脈炎を考えて造影CTやMRIで大血管炎を評価します。臨床的にはPMRのみの患者さんのPETを撮ると約10%に大血管炎に一致したuptakeを認めると言われますが,ルーチンにPMR全例で画像を撮らず,治療抵抗性と判断する場合のみ評価します。
熱や全身倦怠感など全身症状が強く,肩痛・挙上困難が片側性で炎症所見が異常に高いなど,PMRとして非典型的な臨床像をとる場合は,感染性心内膜炎などの感染症を念頭に置き,血液培養をはじめ,各種培養を繰り返しとっておきます。
悪性腫瘍のPMR様症状は年齢相応のスクリーニングを行いながら,治療抵抗性やステロイド漸減が困難なケースで疑います。PMR症状発症時にはわからなくても,1年の経過の中で悪性腫瘍が明らかになることがあるので,可能性を念頭に置くことが重要です。
高齢発症RAは4人に1人がPMR症状を呈し,画像所見(超音波やMRI)でPMRと区別ができません。通常プレドニゾロン投与前にRF/ACPA(anti-cyclic citrullinated peptide antibody)を測定しておきます。PMR症状が前面に出ていても,seropositiveであれば,プレドニゾロンに加えDMARD(disease modifying anti-rheumatic drug)を早期に導入してRAとして治療します。
PMRとして診断する絶対的基準が存在しないので,鑑別疾患を常に考えて治療を進め,臨床像が合わないと考えたら軌道修正するのがPMR治療の大きなポイントと考えます。