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HBVキャリアの関節リウマチ治療

No.4724 (2014年11月08日発行) P.49

南木敏宏 (帝京大学臨床研究医学講座特任准教授)

登録日: 2014-11-08

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

わが国は,欧米と比べてB型肝炎ウイルス(HBV)キャリアが多く,当然,関節リウマチ(RA)患者への免疫抑制療法時にHBV再活性化が問題となります。2011年に日本リウマチ学会からHBV感染RA患者への免疫抑制療法の提言が出ています〔「B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言」(改訂)〕。
このガイドラインに従い,当院受診HBVキャリアRA患者に,核酸アナログを投与し,HBV-DNAの陰性化確認後,メトトレキサート(methotrexate:MTX)6mg/週を開始しました。10mg/週まで増量しましたが,依然としてRA疾患活動性が高い状況です。次のステップとして,MTXの増量か,あるいは生物学的製剤の併用か迷っています。このようなケースで,帝京大学・南木敏宏先生はどのような選択をされるでしょうか。
【質問者】
廣瀬 恒:ひろせクリニック院長

【A】

HBVキャリア(HBs抗原陽性)の患者に,RAの治療を行う際には,肝臓専門医に相談の上,エンテカビルなどの核酸アナログ製剤によるB型肝炎に対する治療を行い,その治療効果があることを確認します。その上で,免疫抑制療法を検討することが推奨されています。
今回のご質問の症例は,核酸アナログ製剤が投与され治療効果を確認の上,MTXが開始されており,ガイドラインに沿ったものです。今後は,定期的にAST,ALTとともに,HBV-DNAの定量を行い,ウイルスDNAが検出感度以下であることを確認しながら,RAの治療を継続していくことになります。
この場合のMTXの投与量に関する推奨はなく,通常の治療に準じて行えばよいと考えます。したがって,MTXは肝障害,血球減少などの副作用に注意しながら,わが国の保険適用量の16mg/週まで増量します。MTX最大量でも治療効果に乏しい場合には,生物学的製剤の併用,他のdisease modifying anti-rheumatic drugs(DMAR Ds)の追加などを検討します。
一方,B型肝炎既感染(HBs抗原陰性,HBs抗体またはHBc抗体陽性)の患者では,HBV-DNAの定量を行い,陰性であれば,通常のRA治療を行います。その後の定期的なAST,ALT検査,HBV-DNAの定量検査が必要です。HBV-DNAが検出された場合は,肝臓専門医に相談の上,核酸アナログ製剤によるB型肝炎に対する治療を行い,その治療効果があることを確認の上,免疫抑制療法を行います。
近年,B型肝炎の既感染患者からの,B型肝炎再活性化が問題となり,HBs抗原のみならず,HBs抗体,HBc抗体も測定されるようになりました。それ以前よりRA治療が行われている場合,HBs抗体,HBc抗体は測定されていない患者さんがいるかもしれません。MTX,生物学的製剤が投与されている患者さんでは,確認することをお勧めします。
また,B型肝炎患者では急激な免疫抑制療法の中止が肝炎悪化につながることもあります。MT X,生物学的製剤は減量・中止の際にも注意が必要です。

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