【Q】
日本では2000年から乳癌に対して視・触診併用マンモグラフィ検診が行われてきました。検診の利益は「乳癌死の減少」ですが,最近は利益のみでなく,不利益も十分に考慮すべきとされます。不利益には,過剰診断,偽陽性・偽陰性,放射線被曝などが挙げられます。中でも,顕微鏡ではがんと診断されても,進行速度が遅く,死につながらないがんを検診で発見・診断する過剰診断,がんではないのに異常と判定される偽陽性が特に重要と考えます。この過剰診断と偽陽性について,わが国および世界の現状などはいかがでしょうか。福井県済生会病院・笠原善郎先生のご教示をお願いします。【A】
がん検診の過剰診断とは,その人の寿命に影響を及ぼさないがんを発見・診断することです。乳癌以外にも前立腺癌や肺癌(すりガラス状陰影,ground glass opacity:GGO),甲状腺の分化癌など成長のゆっくりしたがんで問題となり,そのほか,良性病変の誤診,他の悪性疾患や重篤な慢性疾患に早期癌を発見した場合なども過剰診断に含まれると考えられます。乳癌検診での過剰診断の病態には,まずDCIS(ductal carcinoma in situ)が挙げられますが,高齢者では浸潤癌の一部も含まれてきます。