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HRTに対する概念の変遷

No.4712 (2014年08月16日発行) P.55

樋口 毅 (弘前大学保健学科教授)

水沼英樹 (弘前大学産科婦人科教授)

登録日: 2014-08-16

最終更新日: 2016-10-26

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ホルモン補充療法(HRT)は閉経後女性の健康維持・増進を目的に開発された療法で,20世紀後半には米国で600万人もの女性に投与されていた。HRTがこれほど普及したのは,高齢化社会の到来に加え,閉経後女性に特有な動脈硬化症,脂質異常症,認知力低下,骨粗鬆症などの疾患とエストロゲンの関連が明らかにされ,さらにはこれら疾患に対するHRTの効果を示す多くの臨床データが蓄積してきたことが背景にある。2002年にWHIショックと称されるWomen’s Health Initiative中間報告(文献1)でHRT使用者では乳癌や心血管障害のリスクが高まったとの結果が示され,以来,HRTは大きな後退を余儀なくされてしまった。
このWHIの中間報告がもたらした社会的影響は少なくない。特に医療者が,副作用の発生を必要以上に恐れるあまり,HRTを本当に必要としている女性に対してもその使用を忌避するなどの弊害も出てきていた。しかし,結合型エストロゲン(CEE)を用いたWHI試験では,CEEを単独で用いた場合に乳癌のリスクはむしろ減少するなどのデータが示された。その後の科学的な検証では,HRTのリスクは使用するエストロゲンの種類,投与ルート,投与量,投与期間,投与開始時期,さらには使用する黄体ホルモンの種類などと密接な関連があることが明らかにされた。現在では適切なHRTの方法を選択することで,より安全なHRTが行えるようになってきた(文献2)。

【文献】


1) Writing Group for the Women’s Health Initiative Investigators:JAMA. 2002;288(3):321-33.
2) 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会 編:ホルモン補充療法ガイドライン2012年度版.日本産科婦人科学会・日本女性医学学会, 2012.

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