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不育症の新しい対策

No.4721 (2014年10月18日発行) P.57

福井淳史 (弘前大学産科婦人科診療准教授)

水沼英樹 (弘前大学産科婦人科教授)

登録日: 2014-10-18

最終更新日: 2016-10-26

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妊娠は可能だが結果的に生児の獲得ができないことを繰り返す場合を不育症と呼ぶ。不育症の病態は多様で,リスク因子が必ずしも流産・死産を起こすわけではなく,それぞれのリスク因子に対し明確な治療方針が定まっていないこと,精神的要因がリスク因子と関わり病態が複雑になっていること,偶発的な症例も含まれることなどから,多くの産婦人科医には難解な疾患であった(文献1)。不育症患者に対しては適切なスクリーニングを行い,リスク因子を有する患者に対しては適切な治療を行うことが肝要である。2011年,厚生労働省不育症研究班により不育症管理に関する提言が出され,系統的な不育症管理法が示されてきた(文献2)。
これまでも,抗リン脂質抗体症候群などの凝固異常を有する不育症患者には,抗凝固療法としてアスピリン+ヘパリン療法が第一選択とされてきた。上述の研究班からはヘパリン投与による妊娠成功率は80%以上と報告されている。しかし,これまで抗リン脂質抗体症候群など凝固異常を有する不育症へのヘパリン在宅自己注射は保険適用外であったため,1日2回の通院でヘパリン投与を行うか,自費診療で行わなければならなかった。
2012年1月,ヘパリンカルシウムの在宅自己注射が保険収載され,凝固異常を有する不育症患者の治療が大きく変わった。ヘパリンは通常1日2回,1回5000単位を皮下投与する。なお,ヘパリン投与の際はヘパリン起因性血小板減少症や肝機能障害の発生には十分注意しなければならない。

【文献】


1) 齋藤 滋, 他:産婦の実際. 2011;60(10):1401-8.
2) 齋藤 滋, 他:不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究班の成果を基にした不育症管理に関する提言. 2011.

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