妊婦が卵巣腫瘍を合併した場合にも良性腫瘍では腹腔鏡手術が施行されるようになった。妊娠中に確認される付属器腫瘤の頻度は0.01~1%とされる。大きさ,性状によっては自然経過観察が可能であるが,良性腫瘍であっても直径が10cmを超える場合,6~10cmでも単房嚢胞性腫瘤でない場合は,妊娠12週以降の手術が考慮される(文献1)。しかし,茎捻転などの症状を伴う場合はこの限りではない。また,悪性,境界悪性腫瘍が疑われる場合には,大きさや週数にかかわらず,原則として開腹による手術(付属器切除術)が選択される。
良性腫瘍では妊娠子宮と腫瘍の位置関係を考慮し,腹腔鏡でアプローチが可能であれば疼痛軽減・鎮痛薬の使用軽減,入院期間の短縮,出血量減少,早期回復などの利点から腹腔鏡手術が選択される(文献2,3)。問題点として,気腹による胎児への影響,手術器具による子宮への傷害,妊娠子宮による視野確保困難などがある。気腹に関しては,動物実験やレトロスペクティブな開腹手術との比較検討から,妊娠16~20週に気腹圧15mmHg以下での短時間手術であれば影響はないと考えられる。トロッカー位置,使用する器具に関しては,腫瘍の性状や位置,大きさなどから症例ごとで検討の必要があるが,最近ではスコープの細径化,パワーデバイスの進歩などから臍部などを用いた単孔式手術も選択肢のひとつとなっている。
1) 産婦人科診療ガイドライン─産科編2014作成委員会, 編:産婦人科診療ガイドライン─産科編2014. 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会, 2014.
2) 寺井義人, 他:産婦手術. 2014;25(5):65-9.
3) 日本産科婦人科内視鏡学会, 編:産婦人科内視鏡手術ガイドライン2013年版. 金原出版, 2013, p26-31.