No.4749 (2015年05月02日発行) P.54
波多野貴彦 (京都府立医科大学 疼痛・緩和医療学)
細川豊史 (京都府立医科大学 疼痛・緩和医療学教授)
登録日: 2015-05-02
最終更新日: 2016-10-26
がん疼痛治療における薬物療法は,WHOがん疼痛治療法に基づき,患者に最も適切な薬物が選択され,行われている。
わが国で新たに臨床使用が可能となったタペンタドールはトラマドールを改良して作られた医療用麻薬で,「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」を適応とし,トラマドールの持つμ-オピオイド受容体活性とノルアドレナリン再取り込み阻害作用を強化しつつ,セロトニン再取り込み阻害作用を減弱させたオピオイド鎮痛薬である。そのため侵害受容性疼痛に比べ,神経障害性疼痛に対しての有効性が期待できる。もう1つの特徴として,改変防止技術を用いて作られた製剤(水に溶かしたら粘性のゲルになったり,粉砕しようとすると刃が欠けてしまう硬度がある)であり,誤用や乱用を防止する工夫が施されている。
中等度から高度の強さの痛みに用いるオピオイド鎮痛薬のひとつとして,メサドン(メサペインR錠)がわが国でも上市された。メサドンは,現在承認されているほかの強オピオイド鎮痛薬での“がん”疼痛管理が困難な患者に対して有効な鎮痛効果を発揮する可能性がある医療用麻薬であるが,その副作用の特性(QT延長,呼吸抑制,過量投与のリスクが高い)から安易な使用による死亡リスクも懸念されている(文献1)。
これら薬物の特性を十分理解し,慎重に使用することで,管理困難な難治性がん疼痛に対しての新しい治療薬として期待される。
1) 山代亜紀子, 他:ペインクリニック. 2013;34(11):1503-10.