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子宮頸癌における妊孕性温存治療

No.4754 (2015年06月06日発行) P.49

奥川 馨 (九州大学産科婦人科)

加藤聖子 (九州大学産科婦人科教授)

登録日: 2015-06-06

最終更新日: 2016-10-26

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『子宮頸癌治療ガイドライン2011年版』(文献1)では,妊孕性温存を強く希望する一部のⅠA1期に対しては子宮を摘出することなく,子宮頸部円錐切除術のみでの経過観察が可能とされている。現在,広く行われている円錐切除術ではあるが,術後に妊娠した場合,早産率が有意に上昇することが知られている(文献2)。
そのほかの早期癌に対する標準的根治術式は子宮全摘出術であるが,妊孕性温存を希望する若年患者が近年増加してきており,そのような患者に対する妊孕性温存治療として広汎子宮頸部摘出術が開発された。わが国でも2000年代より開始されているが,一般に対象とされているのは遠隔転移のない早期癌のみであり,腫瘍径の大きなものや予後不良な組織型に対しては手術適応外としている施設が多い。再発率,死亡率などの予後は標準術式の広汎子宮全摘出術と変わらないとされている。
頸部摘出術により子宮体部が温存できたとしても,頸部の消失に起因する不妊症となる症例も多く,妊娠に向けて不妊症専門医の協力は不可欠である。また,妊娠に至った場合でも前期破水,早産のリスクは高く,周産期ならびに新生児専門医の協力が可能な施設においての経過観察が必要となる。現状では,頸部摘出術は強く妊孕性温存を希望する患者のみを対象としたオプションであり,婦人科腫瘍専門医のみならず,不妊症専門医および周産期専門医の協力が可能な施設で行うべき集学的手術療法である。

【文献】


1)日本婦人科腫瘍学会, 編:子宮頸癌治療ガイドライン2011年版. 金原出版,2011.
2)Kyrgiou M, et al:Lancet. 2006;367(9509):489-98.

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