間質性肺炎(IP)は肺癌発生の危険因子であり,治療制限因子でもある。化学療法,放射線療法,手術療法のいずれも急性増悪の原因となる。日本呼吸器外科学会によるIP合併肺癌手術1763例の調査研究(文献1)では,9.3%に急性増悪(術後30日以内)が起こり,そのうち43.9%が死亡するとされ,通常の肺癌手術死亡率の10倍のリスクになる。
同研究では,急性増悪の既往,区域切除以上の切除,IPのタイプとしての特発性肺線維症(IPF),男性,術前のステロイド使用,血清KL-6高値,低肺活量,の7項目が術後IP急性増悪の危険因子として同定され,これら因子による増悪リスク予測スコアが提唱された(文献2)。また,急性増悪を避けるため縮小手術を行うと,今度は長期予後ががん死により不良となるというジレンマがある(文献3)。
周術期のIP急性増悪に対して予防効果が証明された治療法はない。ピルフェニドンはIPFの自然経過における無増悪生存率の改善が証明されている薬剤であるが,筆者らはこの薬剤を周術期に用いて急性増悪の予防を検討した(文献4)。これまでの30例以上の経験では,まだ術後急性増悪は観察されていない。多施設第2相試験(WJOG6711L)の結果も有望で(文献5),さらなる検証が期待されている。
1) Sato T, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 2014;147(5):1604-11.
2) Sato T, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2015;63(3):164-72.
3) Sato T, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 2015;149(1):64-9, 70.
4) Iwata T, et al:Surg Today. 2014 Nov 22. [Epub ahead of print]
5) 岩田剛和, 他:第55回日本肺癌学会学術集会. 2014年11月16日, 京都.