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SLE合併妊娠 【ステロイド投与量を減らすため免疫抑制薬の併用が増加】

No.4785 (2016年01月09日発行) P.48

板倉敦夫 (順天堂大学産婦人科教授)

登録日: 2016-01-09

最終更新日: 2016-10-26

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SLE合併妊娠は近年増加しているが,原疾患の増悪や流早産,胎児発育不全,妊娠高血圧症候群といった妊娠合併症ももたらす。さらに,病態によっては静脈血栓塞栓症や新生児ループス,胎児・新生児に房室ブロックなどを合併するなど,母児にとってリスクの高い妊娠である。
SLEでは以前から,(1)病態がステロイド維持量で10カ月以上寛解状態にあること,(2)重篤な臓器病変がないこと,(3)ステロイドによる重篤な副作用の既往がないこと,(4)免疫抑制薬の併用がないこと,(5)抗リン脂質抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体が陰性であること(が望ましい),(6)出産後の育児が可能であること,⑦本人ならびに家族の理解および承諾が得られていること,が妊娠許可条件とされていた。この厳しい許可基準により妊娠を断念した女性も多いことであろう。
近年,免疫抑制薬(タクロリムスなど)の継続使用が不可欠な臓器移植後妊娠・出産の症例が蓄積され,動物実験で催奇形性が認められても,ヒトには催奇形性や胎児毒性が認められないと報告された。そこで,ステロイド単独では治療効果が不十分な膠原病症例には,十分なインフォームドコンセントがあれば併用も容認されるようになった。近年,SLEの管理では,ステロイド投与量を減らすために免疫抑制薬を併用することが多くなっている。晩婚化により結婚から妊娠可能な期間が短くなっており,免疫抑制薬の中止を試みることが難しいのかもしれない。SLE合併妊娠の管理法が変わってきている。しかし,免疫抑制薬の併用によって種々の妊娠合併症が軽減されて,母児ともに安全な妊娠が遂行できるのかについては,さらなる症例の蓄積を待つべきであろう。

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